減価償却の自己金融効果について、数値例をもとに解説します。
・そもそも減価償却とは?
・減価償却費の特徴は?
・減価償却の自己金融効果とは?
減価償却 とは
固定資産の取得価額を
使用可能期間にわたって、
各事業年度の費用として配分する手続
のことです。
なお、固定資産とは、長期間にわたり事業活動に使用する自己所有の資産のことです。
また、固定資産のうち、設備、機械装置、器具・備品といった時間の経過とともに価値が減少する資産のことを「減価償却資産」といいます。
減価償却のイメージ図
取得価額1,000千円、耐用年数5年
【参考】ブログ「適正な期間損益計算と減価償却」
国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」
減価償却費の特徴
固定資産を一括現金払いにした場合、その後の事業年度で現金支出はありません。その後の事業年度では、減価償却費を計上します。減価償却費は、現金支出がない費用(非現金支出費用)です。なお、割賦購入した場合、購入事業年度以降も現金支出がありますが、減価償却費との関連性はありません。
自己金融効果 とは
「自己金融効果」とは、減価償却費の計上により、減価償却費相当額の資金が企業内に留保される効果のことです。これは、非現金支出費用共通の特徴です。例えば、ソフト前払費用償却、繰延資産償却なども同様です。
事例
減価償却とキャッシュフローの関係について、ブログ「適正な期間損益計算と減価償却」の事例で解説します。なお、各事業年度の現金収支は以下のとおりです。
- ×1年度の現金収支
収入:売上高30,000千円
支出:売上原価15,000+販売費及び一般管理費(減価償却費除く)10,000+法人税等1,510+固定資産の取得1,000=27,510千円
収入-支出=30,000-27,510=2,490千円 - ×2年度~×5年度の各事業年度の現金収支
収入:売上高30,000千円
支出:売上原価15,000+販売費及び一般管理費(減価償却費除く)10,000+法人税等1,510=26,510千円
収入-支出=30,000-26,510=3,490千円
損益計算書とキャッシュフロー計算書の関係は?
損益計算書は発生主義のため、現金収支は直接わかりません。キャッシュフローを求めるために、キャッシュ・フロー計算書を作成します。キャッシュ・フロー計算書(間接法)は、損益計算書の税引前利益から逆算して作成します。今回は、減価償却に焦点をあてるため、税引後利益から逆算します。
各事業年度において、税引後利益に減価償却費を加算すると現金増加額3,490千円と一致します。
(×1年度については、固定資産の取得のための支出1,000千円を差し引くと一致)。
したがって、各事業年度において、税引後利益に減価償却費200千円をプラスした金額が、現金増加額として企業内に留保されます。この減価償却費200千円が自己金融効果です。なお、(営業利益+減価償却費)で簡易営業キャッシュフローを表現したものがEBITDAです。以下のブログもご参照ください。
【参考】ブログ「EBITDA(イービットディーエー)とは?」
貸借対照表は?
上記の事例の貸借対照表は下記のとおりです。なお、×5年度末の会計的な内部留保は、税引後利益の累積16,450です。
まとめ
今回は、減価償却とキャッシュフローの関係、さらに減価償却の自己金融効果について解説しました。なかなかわかりにくい部分もありますが、数値例で理解するのがはやいと思います。