最終更新日:2022年9月5日
事業承継税制は、2009年度税制改正で創設されました。しかし、要件が厳しく、毎年のように改正されるものの利用件数は伸びませんでした。そこで、2018年度税制改正にて要件が大幅に緩和されました。今回は、新しい特例事業承継税制(法人版)について解説します。
【この記事を読んで得られること】
- 事業承継税制の種類は2つある?
- メリットが多い特例措置を受けるには、いつまでに何をすればよい?
- 特例措置を受ける際には、見届け人が必要?
相続税(贈与税)の納税「猶予」の意味
事業承継税制は、相続税(贈与税)の納税「猶予」であって「免除」ではありません。
要件を満たしていれば、代々「贈与税→相続税→贈与税→・・・」の「猶予」が続きます。しかし、「免除」されるわけではありません。
三代目まで承継したと仮定すると
初代⇒二代目⇒三代目と事業承継をした場合を仮定しましょう。
本来であればそれぞれの代で相続税(贈与税)を納税する必要があります。
しかし初代から納税猶予制度を活用し、二代目から三代目に贈与(あるいは相続)した際に、二代目は納税せずに済みます。
したがって、長い期間に渡って納税猶予を継続する場合には税務メリットがあります。
国に対する親子ローン?
この事業承継税制は、言い換えれば、月次返済のない国に対する親子ローンのイメージです。
相続税(贈与税)の納税猶予は、国への借金と同じです。月次の返済がなく、親が子供に自社株を移動した際に、国への借金が子に引き継がれます。さらに、子供が孫に自社株を移動した際に、またローンが引き継がれます。要件を満たせなかった時に、それまでの利子と合わせてローンを返済することになります。この点で子孫に借金を残すイメージがあるため、なかなか踏み切れない経営者も多いと思います。
特例措置と一般措置の違いは?
2018年度税制改正で「特例措置」が新たに創設されました。したがって、従前からある制度「一般措置」と二本立てとなりました。

出典:中小企業庁「経営承継円滑化法申請マニュアル令和4年4月改訂版
」特例事業承継税制の適用要件は
以下の二つを満たす必要があります。
- 事前の計画策定
期間:2018年4月1日から2024年3月31日まで(6年間)
実行:都道府県庁に「特例承継計画」を提出 - 適用期限
期間:2018年1月1日から2027年12月31日まで(10年間)
実行:後継者が贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得
上記の要件を満たせなければ、「一般措置」しか適用できない点に注意が必要です。
特例措置を受けるには認定経営革新等支援機関の所見が必要
「特例承継計画」の提出には、認定経営革新等支援機関の所見の添付が必要です。
したがって、顧問税理士が認定経営革新等支援機関なのか確認しておく必要があります。
もし顧問税理士が認定経営革新等支援機関でない場合、地元の商工会・商工会議所、取引先金融機関に認定経営革新等支援機関として所見を書いてもらえるか、あるいは別の税理士にお願いする必要があります。
特例措置はいつから適用できる?
なお、2017年12月31日以前に後継者が贈与・相続により株式を取得した場合は、上記の➀➁の要件を満たしていませんので、特例措置は適用できません。つまり、一般措置から特例の措置への切り替えはできません。
相続の場合は期日を調整することはできません。贈与の場合は2017年12月31日以前に贈与した場合と2018年1月1日以降に贈与した場合とでまったく別の制度の適用となり、 今まで事業承継税制を適用してこなかった経営者のほうが得をするというある種の不公平感が生じてしまいました。
まとめ
一般措置と特例措置を対比すると以下の図のようになります(黄色の部分が特例措置)。当事務所は、経済産業省より経営革新等支援機関の認定を受けています。お気軽にご相談ください。
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実際に実行する場合は、顧問税理士等の専門家に必ずご相談ください。
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