「顧問税理士の探し方」について、専門家の立場で解説します。
・顧問税理士を変えたい理由とは?
・税理士を探す4つの方法とは?
・顧問税理士を選ぶ基準とは?
※この記事は、2021年9月21日に初公開した記事に最新情報を加味して更新したものです。
顧問税理士を変えたい理由とは
今まで相談を受けた中で、顧問税理士を変えたくなる理由には以下のようなものがあります。
- 折り返しの連絡が遅い、連絡がなかなか取れない、相談しても回答がなかなかこない。
- 月次の試算表や決算書がなかなか出てこない。
- 税理士・会計士本人が来ない。
- 担当職員が頻繁に変わり、そのたびに引き継ぎ業務が発生する。
- 最近の税制改正に疎い。
- 報酬が高い。
- 先代社長とは相性が合っていたが自分とは合わない、もっと経理を効率化したい。
- 税理士や会計事務所職員からの説明で専門用語が多く理解できない。
- 節税や事業承継、経営に関する助言がない、親身になってくれない。
- 自社の業種・業界に理解がない、理解しようとしない。
- 税務調査の時に頼りにならなかった。 など
以上、ざっと箇条書きしました。中には自戒の念もこめて列挙したものもあります(苦笑)。ただ、すべてを完璧にクリアしている会計事務所はないと思います。
会計事務所からの説明不足も原因に
会計事務所から経営者への説明不足のため、誤解されていることも多いように思います。
例えば、「6.報酬が高い」ですが、何と比べて高いと感じているのでしょうか。税務顧問サービスは誰に頼んでも同じと考えている経営者の方も多いようですが(コモディティ商品?)、実際はかなり異なります。
また、「9.経営に関する助言がない」ですが、そもそも経営相談は、税理士の職務内容に含まれません。誰でも経営助言ができるわけではないのです。
これは経営者側の認識不足もありますが、会計事務所側が業務内容を丁寧に説明していない点も影響していると思います。
【参考】ブログ「顧問税理士に経営相談ができない、、、」
顧問税理士の探し方
新しく税理士を探すにはどのような方法があるのでしょうか。一般的に以下の4つが考えられます。
友人に紹介してもらう方法
メリット :友人が勧めるくらいなので、信頼性が高い。
デメリット:相性が合わなかった場合でも断りにくい。
顧問税理士には、会社や社長個人の領収書など、自分たちの生活の状況を見られることになります。またその情報が万が一紹介者に漏れてしまったら困る、という点で、友人の紹介よりも、信頼できそうな赤の他人の税理士の方が気楽で良い、という方も少なくありません。
インターネットで探す方法
メリット :手軽にできる。
デメリット:WEBサイトだけではどんな事務所かわかりにくい。
やみくもにインターネットで探すのではなく、日本税理士会連合会WEBサイトの「税理士情報検索サイト」で探す方法もあります。このサイトには、日本全国のすべての税理士が登録されています。条件(地域、業種、取扱業務など)を指定して検索し、検索した税理士のWEBサイトを閲覧してみましょう。また、紹介された人が本当に税理士なのか、このWEBサイトでわかります。
いくつか気になった事務所をピックアップして、面談してもらうと良いと思います。
地元の税理士会、公認会計士協会に依頼する方法
メリット :どちらも士業団体のため、信頼がある。
デメリット:地域会に紹介登録をしている会員の中から紹介されるため、必ずしもこちらの希望に合う税理士・会計士がいない可能性がある(相性なども含めて)。
普段、税務申告を提出している税務署の管轄に必ず地域の税理士会がありますので(公認会計士協会は都道府県ごと)、そこにお願いする方法です。ただ現在の顧問税理士がその支部に属している場合、気まずい場合があります。またある程度規模が大きい会社の場合、地元の税理士に頼まずに大都市圏の税理士に頼んでいるケースもあります。
税理士紹介会社に探してもらう方法
メリット :成約しないと紹介会社は成功報酬がもらえないため、積極的に紹介してくれます。
デメリット:成約時に報酬の3割程度(業者により異なる)を会計事務所から紹介会社に支払うことになるため、会計事務所側は割引した状態からスタートすることになります。したがって、金額相応の対応をしてもらえない可能性があります。
金融機関でも税理士を紹介しているケースがあります。ただ紹介責任があるため、慎重にされていることが多いように思います。最近も、金融機関の紹介先である補助金支援会社が倒産して、補助金申請や着手金の返還で問題になっているケースがあり、紹介責任上、ますます慎重にならざるを得ないように思います。
【参考】帝国データバンク倒産速報 北浜グローバル経営株式会社
税理士を選ぶ際の基準は?
さて、実際に税理士と面談する際に、何を聞けばよいでしょうか?聞いておくと良いと思われる事項は以下のとおりです。
- 面談している税理士本人が担当するのか?別の税理士が担当するのか?資格のない職員が担当するのか?
- 税理士の経歴は?(スモールビジネスのままでよいのか、将来は株式公開を目指すのか、自社の業界の経験はあるのか、など、自分の目指す方向性に合った経歴が理想です。)
- リアル訪問は毎月か?決算だけか?オンライン対応はしているのか?
- 税理士に依頼する業務範囲は?
- 契約書のひな型は事前にもらえるのか?業務事項は契約書で明確にされているか?
- 記帳はどちらが行うのか?次々に追加料金がかかる契約になっていないか?
- 個人事務所の場合、その税理士が倒れたらどうなるのか?
【参考】ブログ「税理士に依頼する3つのパターンとは?」
まとめ
今回は、税理士の探し方についてご紹介しました。
税理士を選ぶ際の基準ですが、最終的には「相性(世界観)」が重要だと思います。可能であれば、日にちを変えて2,3回会って話ができると良いかもしれません。
なお、価格を判断基準にしがちですが、価格のみで選んで後悔している経営者の相談もよく聞きます。「安かろう悪かろう」というのは、どの業界でも判断基準の一つになると思います。税理士の提供するサービスはコモディティ商品(誰でも一緒)ではありません。中堅・中小企業では、外部専門家を含めたスキルマトリックスの一環で探すのも良いと思います。
【参考】ブログ「中小企業とスキルマトリックス」