最終更新日:2023年2月7日
インボイス制度導入にあたって、急変緩和措置として「経過措置」があります。
今回は、インボイス制度開始後、支払先がインボイス未登録者(免税事業者)の場合の課税事業者への影響について解説します。
【この記事を読んで得られること】
- インボイス制度導入にあたっての経過措置とは?
- インボイス登録事業者(買い手側)への影響は?
- 消費税以外の法人税等を含めた影響は?
課税事業者が免税事業者から仕入れをする場合
通常、事業者は、買手側、売手側の両方の側面を持っています。今回は、課税事業者が免税事業者から仕入れをするケースをみていきます。下図のAの立場に該当します。

売手側:商品・サービスを提供して、金銭を受け取る側
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なお、仕入先が法人の場合、下記のサイトでインボイス登録しているかどうか検索することができます。
【参考】国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」
インボイス未登録の免税事業者からの仕入税額控除の経過措置
買手側への急変緩和措置として、制度開始から一定期間は経過措置が設定されています。
インボイス未登録事業者(免税事業者)からの仕入れであっても、消費税相当額の一定割合を仕入税額控除できる経過措置が設けられています。
なお、経過措置を適用できる期間、割合は、以下のとおりです。
- 2023(令和5)年10月1日から2025(令和8)年9月30日までは仕入税額相当額の80%
- 2025(令和8)年10月1日から2028(令和11)年9月30日までは仕入税額相当額の50%
なお、この経過措置の適用を受けるためには、必要事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となります。
事例の概要
以前のブログでも使用した下記の事例(法人A社)で検討します。

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【参考】ブログ「売上高は税込処理か、それとも税抜処理か」
事例1~インボイス登録事業者から仕入れたケース~
B社がインボイス登録事業者(課税事業者)の場合、以下の仕訳を計上します。B社から仕入れた際の消費税額100は、全額、売上高にかかる消費税額200から控除できます。その結果、税務署に納税する消費税は100となります。また、法定実効税率を30%と仮定すると、法人税等は300となります。以上より、税負担は消費税100+法人税等300=400となります。なお、現在(インボイス制度開始前)は、相手先にかかわらず、今回の処理となります。

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事例2~インボイス未登録事業者(免税事業者)から仕入れたケース(経過措置なし)~
B社がインボイス未登録事業者(免税事業者)の場合、下図のようになります。

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B社から仕入れた際の消費税相当額100は、売上高にかかる消費税額200から控除できません。その結果、税務署に納税する消費税は200となります。しかし、仕入税額控除されなかった部分は、仕入として損金計上されます。その結果、法定実効税率を30%と仮定すると、事例1と比較して法人税等は30減少し、270となります。以上より、税負担は消費税200+法人税等270=470となります。したがって、免税事業者に支払った消費税相当額100全額を負担する代わりに、法人税等の負担額は30減少します(=100×30%)。

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事例3~インボイス未登録事業者(免税事業者)から仕入れたケース(経過措置あり)~
事例2に対して、経過措置を適用した場合の仕訳は以下のとおりです。
B社から仕入れた際の消費税相当額100のうち、80(2025年9月30日までは80%)は売上高にかかる消費税額200から控除できます。その結果、税務署に納税する消費税は120(=200-80)となります。また、仕入税額控除されなかった部分20は、仕入として損金計上されます。その結果、事例1と比較して法人税等は6減少し、294となります。以上より、税負担は消費税120+法人税等294=414となります。

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事例1~3の税負担まとめ
以上より、経過措置によって、税負担がかなり軽減されていることがわかります。インボイス未登録事業者(免税事業者)から請求される消費税相当額の全額を負担するわけではないこともわかります。

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まとめ
支払先がインボイス未登録事業者(免税事業者)の場合の影響について、解説しました。2023年度税制改正により、インボイス登録の締め切りが実質的に延長されたことから、開始直前まで支払先がインボイス登録しているのか否か、はっきりしません。しかしながら、免税事業者との取引条件の決定については、先延ばしにせず早めに対応する必要があります。なお、簡易課税制度を適用すれば、支払先のインボイス登録状況に影響を受けません。インボイスに関するお悩み事は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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