最終更新日:2022年10月27日
今回は、会社経営にあたって「議決権割合と株主の権利」についてまとめました。
【この記事を読んで得られること】
- 株主総会の決議は、頭数の多数決ではない?
- 特別決議を単独で決議できるのに必要な議決権割合は?
- 株主総会は何種類ある?
議決権の割合と行使できる権利
株主は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有します。
しかし、単元株式数を定款で定めている場合、一単元の株式につき一個の議決権となります。
これを、一株一議決権、一単元一議決権の原則といいます。また、相互保有株式※1や自己株式※2に議決権はありません。
経営者は、特別決議が単独で決議できるように、2/3以上の議決権割合を持つのが理想です。

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
※1:株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるとして法務省令で定めるもの)
※2:自己株式:自社で保有する株式のことです。
株主総会決議には3つの種類がある
株主総会決議には、以下の3つがあります。
普通決議(会社法第309条第1項)
定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う決議です。
決議事項の例として、
- 取締役の選任・解任
- 監査役の選任
- 会計監査人の選任・解任
- 取締役・監査役の報酬等
- 剰余金の配当
特別決議(会社法第309条第2項)
当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う決議です。定款によって株主の頭数要件を追加することもできます。
決議事項の例として、
- 譲渡不承認による自社株式の買い取り、指定買取人の指定決議
- 特定人からの自社株式の買い取り
- 相続人等への売渡請求
- 株式併合
- 新株の有利発行
- 監査役の解任
- 減資
- 定款の変更
- 合併• 会社分割• 株式交換• 株式移転• 現物配当などの組織再編
- 事業譲渡(全部あるいは重要な一部)
- 解散
特殊決議Ⅰ(会社法第309条第3項)
当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権三分の二以上に当たる多数をもって行う決議です。特別決議と比較して頭数が定足数の要件になっています。
決議事項の例として、
- 株式の譲渡制限(株式譲渡にあたって株主総会あるいは取締役会の承認が必要)の設置
特殊決議Ⅱ(会社法第309条第4項)
総株主の半数以上であって、総株主の議決権の四分の三以上に当たる多数をもって行う決議です。特別決議と比較して頭数が定足数の要件になっています。
- 剰余金の配当、議決権等について株主ごとに異なる取り扱いを定める定款の変更
(属人的株式)
留意事項
■普通決議、特別決議、特殊決議は、それぞれ定足数、議決に分かれている点は注意が必要です。
■株式の譲渡制限によって、会社経営に好ましくない者の参加を阻止することができます。
しかしながら、「事業承継実態調査((独)中小企業基盤整備機構 平成23年3月実施)」4ページによれば、28%の会社で株式譲渡制限がありません。なぜなら、昭和41年に「定款による株式譲渡制限が導入」されたため、昭和41年以前に設立された会社で定款変更を行っていない会社が相当数あると推定されます。また特殊決議Ⅰの要件が厳しいため、変更したくてもできない会社も多いと思われます。
■企業会計上、原則として、上場会社に20%以上の議決権を所有されると持分法適用会社、過半数の議決権を所有されると連結子会社となります。
このため、未上場会社でありながら四半期決算を行う必要がでてきます。
したがって、上場企業から出資の要請があった場合はこの点にも留意が必要です。
■特例有限会社の特別決議は、「総株主の半数以上」が出席し、「当該株主の議決権の四分の三以上」の多数と読み替えますので、注意が必要です(会社法整備法第14条3項)。
事 例
例)A社の株主構成(表2)
発行済株式数200株、自己株式20株
株主甲の株式所有割合は6割です。
ただし、自己株式に議決権はありません。
したがって、甲の議決権割合は2/3以上となり、単独で普通決議、特別決議の定足数、議決を満たすことができます。

まとめ
事業承継や自社株式の買い取り、VC(ベンチャーキャピタル)からの出資の際に、社長としてどの程度の議決権を持てばよいのか、悩ましいところです。そのときの株価も連動してきますので、事前に専門家に確認したほうが無難です。
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