種山会計士

経営者の方から「顧問税理士が経営相談に対応してくれない」という不満を聞くことがあります。ただこれは誤解されているケースが大半です。
今回は、税理士の独占業務の観点から解説します。

【参考】ブログ「顧問税理士を変えたい理由とは

税理士が経営相談に対応するのは普通のことか?

経営者は孤独であり、日常の経営にあたって、誰かに相談したくなるのは当然です。
月1回程度接触のある顧問税理士 は、お金まわりの相談 をする相手として最適です。
しかし、中小企業経営者の方から「うちの顧問税理士は経営の相談にのってくれない」という話がよく出てくるのはなぜでしょうか。また、顧問税理士が経営相談に対応するのは当たり前のことなのでしょうか。
今回は、税理士の独占業務の観点からみていきます。

税理士の独占業務について

税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し①税務代理、②税務書類の作成、③税務相談を行います(税理士法第2条)。以下、それぞれ見ていきます。

【参考】国税庁「非税理士により行うことが禁止される税理士業務」

「税務代理」

税務申告等に関する代理、代行
あるいは
税務官公署の調査や処分に対する主張・陳述の代理、代行
のことです。

「税務書類の作成」

税務書類とは、税務官公署に対する申告書等の書類が該当します。つまり、租税に関する法令の規定に基づき作成し、かつ、税務官公署に提出する書類で、財務省令で定めるものをいい、次に列挙する書類のことです。
(税務書類)
申告書、申請書、請求書、不服申立書、届出書、報告書、申出書、申立書、計算書、明細書、その他これらに準ずる書類  
なお、税務書類の作成とは、
依頼者の提出資料に基づき、租税法にしたがって専門家としての精査、判断を加えて作成すること
です。他人の作成したものの転記等単なる代書は、書類作成には当たりません

「税務相談」 

税務官公署に対する申告等、第1号(税務代理)に規定する主張・陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」です。
「相談に応ずる」とは、相談を受けて意見を述べたり、教示したりすることです。その内容は相談者(納税者)の個別具体的な納税義務に係わるものです。単に仮定の事例に基づいた計算や一般的な税法の解釈などは税務相談には該当しません
例えば、個別具体的な事例であっても、大学や各種学校などの授業の教材である場合は、税理士業務ではありません。また同じ内容であっても、それが具体的な納税義務にかかる個別的な事案である場合は、税務相談に当たります

税理士業務は無償独占業務

以上のように、税理士の無償独占業務が税理士法に規定されています。これは、有料、無料に関係なく、税理士しか行えない業務ということです。
したがって、無資格者者が、個別・具体的な税務相談に対応しているのは税理士法違反です。最近は事業承継支援が盛んですが、無資格者が個別具体的な税務相談に対応するのは税理士法違反です。

税理士が経営相談できるのは当たり前か

経営コンサルタントの国家資格に「中小企業診断士」があります。しかし、経営相談対応を独占業務としている法律はありません。したがって、中小企業診断士であっても経営相談にのることは独占業務ではありません。また、経営相談分野は、マーケティング、財務、会計、税務、人事、法務など多岐にわたります。
経営相談の内容も経営者のステージや時期によって異なります。したがって、それらすべてに対応するのは不可能です。

まとめ

税理士の本来業務は税務代理、税務書類の作成、税務相談です。
したがって、「経営相談対応」は税理士という資格とは何ら関係性のないスキルです。また、補助金の提案などは、自分自身で勉強したり、事務所の運営から学んで会得したスキルです。自前のネットワークを構築している税理士であれば、自分で解決できない場合でも、相談された課題にマッチした相手を紹介してくれると思います。