このコラムでは、仲介者とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いと、契約前に確認すべき点を整理します。M&A仲介会社から連絡を受けた、あるいはM&Aの相談先を検討している、中小企業の経営者の方向けの内容です。
仲介者/仲介契約とは
仲介者は、譲渡側・譲受側の双方と契約を締結し、マッチング支援等を行う支援機関です。中小M&Aガイドラインでは、仲介者が双方との間で結ぶ契約を「仲介契約」といいます。これに基づく業務が「仲介業務」です。業務範囲は、仲介者ごとに異なります。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第2版)」FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA契約とは
FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、譲渡側または譲受側のいずれか一方とだけ契約を締結し、マッチング支援等を行う支援機関です。中小M&Aガイドラインでは、この契約を「FA契約」といいます。これに基づく業務が「FA業務」です。業務範囲は、FAごとに異なります。

仲介者とFAの違い
| 項目 | 仲介者 | FA |
|---|---|---|
| 契約の相手方 | 譲渡側・譲受側の双方 | 譲渡側・譲受側のいずれか一方 |
| 手数料の支払い元 | 通常、双方から受領 | 契約した一方のみから受領 |
| 利益相反リスク | 構造的に生じる | 契約した依頼者以外との利益相反は生じにくい |
譲渡側企業の規模が小さく、単独で手数料を負担する余力が乏しい場合、双方で分担できる仲介者が選ばれる傾向にあります。中小M&Aの実務で、FAよりも仲介者という形態が多く使われているのはこのためです。
利益相反が生じる構造
双方と契約を締結する仲介契約には、構造的に利益相反のリスクが伴います。これは、個々の仲介者の姿勢や誠実さとは別に、契約の仕組みそのものから生じるものです。利益相反が生じること自体が、直ちに違法となるわけではありません。
例えば、事業譲渡の場合を考えてみます。譲渡側企業にとって譲渡対価は高い方が望ましく、譲受側企業にとっては低い方が望ましいものです。双方と同時に契約を結ぶ仲介契約には、次のような構造的な緊張関係が含まれます。
- 一方の当事者、特にリピーターになり得る譲受側企業の利益が優先されやすくなる可能性
- 譲渡額の増加が仲介者自身の手数料増加に直結するため、譲渡側企業の利益が優先されやすくなる可能性
契約前に確認すべき点
2024年8月、中小M&Aガイドラインが第3版に改訂されました。仲介者・FAに対し、契約締結前の書面による重要事項説明を、より詳しく求めています。中小企業庁は、確認すべき項目をチェックリストとして公表しており、その中から契約前の判断に直結する項目を紹介します。
- 仲介契約かFA契約か:まず、本件がどちらに当たるかを確認します。仲介者は、双方から手数料を受け取るのが通常です。
- 業務範囲・内容:どの工程まで対応するのか、具体的な業務内容を確認します。
- 手数料の体系:算定基準・支払いのタイミング・最低手数料の有無を確認します。
- 秘密保持の範囲:誰に、どこまでの情報共有が認められるかを確認します。
- 専任条項・直接交渉の制限:専任条項とは、他の仲介者・FAへの並行依頼を禁じる条項です。直接交渉の制限とは、貴社と候補先の直接交渉を禁じる条項です。それぞれの有無を確認します。
- テール条項:契約後も一定期間、手数料を請求できる条項です。有無と期間(目安は2〜3年)を確認します。
これらは中小企業庁のチェックリストの一部で、全項目は同庁の公表資料で確認できます。
なお、契約後に仲介者・FAの対応に疑問が生じることがあります。その場合は、M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口(中小企業庁)に相談できます。
まとめ
利益相反のリスクはあるものの、中小M&Aの実務では、FAよりも仲介者という形態が多く用いられているのが現状です。したがって、重要なのは仲介者かFAかという形態の選択そのものではありません。契約前に、上記の確認点を書面で確認できるかどうかです。それが実務上の判断材料になります。
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