種山会計士

今回は、中小企業経営者向けにM&A支援機関について解説します。
・そもそもM&Aとは?
・中小企業庁に登録されているM&A支援機関とは?
・M&A支援機関を選ぶ際の基準とは?

そもそもM&Aとは

Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称です。なお、日本では、組織再編(合併、会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含んだ事業の引継ぎ(譲渡・譲受)のことをさします。

中小M&Aとは

M&Aの中でも、特に、「後継者不在の中小企業の事業を、M&A手法により社外の第三者に引き継ぐこと」をいいます。他方で、「事業承継型M&A」と呼ぶ専門家もいます。なお、中小M&Aで準拠すべき「中小M&Aガイドライン」においては、親族内承継や従業員承継は「中小M&A」に含まれません。

M&A支援機関とは

文字通り、M&Aを支援する機関のことです。具体的には、譲渡側、譲受側に対するマッチング支援や、中小M&Aの手続進行に関する総合的な支援(以下、「マッチング支援等」)を行う支援機関のことです。なお、FA(フィナンシャル・アドバイザー)仲介者の2種類があります。

FA(フィナンシャル・アドバイザー)

FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲渡側・譲受側のどちらか一方との契約に基づいて、マッチング支援等を行う支援機関のことです。

仲介者

仲介者とは、譲渡側・譲受側の双方との契約に基づいて、マッチング支援等を行う支援機関のことです。

なお、FAと仲介者の違いについては、下記のブログもご参照ください。

【参考】ブログ「仲介契約か、それともFA契約か

M&A支援機関登録制度とは?

後継者不在企業の増加により、M&A支援会社が増加しています。しかし、定められたルールもなく、中小M&Aは、過渡期にあります。そのため、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築する必要があり、2021年8月に中小企業庁によりこの制度が創設されました。この制度の創設により、補助金の対象が限定され、情報提供窓口も設置されました。

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象となる支援の限定

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A支援機関の活用に係る費用(仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用等に限る)については、予め登録されたM&A支援機関の提供する支援に係るもののみが補助の対象となりました。したがって、補助金を活用したい場合、M&A支援機関として登録されているか否か、事前に確認する必要があります。

情報提供受付窓口の創設

登録されたM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口が創設されました。実際に中小M&Aを支援機関に依頼して何か問題があった場合、こちらの窓口に通報することが可能となります。

M&A支援機関にはどのような機関があるのか

M&A支援機関は、属性ごとに何種類かに分かれます。なお、中小企業庁の中小M&A登録機関データベースに登録されている支援機関の内訳は以下のとおりです。ちなみに、この制度は定期的に登録が行われており、2022年9月分においては、新規登録は34機関、登録抹消169機関でした。

2022年9月30日現在2,688機関

支援機関の種類法人個人計法人数個人数
M&A専門業者(FA)424(▲23)383(▲14)41(▲9)
M&A専門業者(仲介)616(▲22)558(▲18)58(▲4)
金融機関160(▲1)160(▲1)
商工団体
士業等専門家936(▲61)486(▲32)450(▲29)
M&Aプラットフォーマー19(▲3)18(▲3)1(-)
コンサルティング会社129(▲2)111(▲1)18(▲1)
その他404(▲23)268(▲17)136(▲6)
合計2,688(▲135)1,984(▲86)704(▲49)
()書きは、2022年3月末時点との比較

なお、この制度では、事業年度ごとに実績報告が義務化されています。

以下では、それぞれの支援機関について解説します。

M&A専門業者

マッチング支援等を専門に行う民間業者のことです。M&A専門業者は、契約形態により、FA・仲介者の2種類に分かれます。なお、2022年9月30日時点で登録機関データベースに登録されているのは、FA424機関、仲介者616機関です。

金融機関

与信(融資)業務等に加え、主に融資顧客に対してマッチング支援等を行う金融機関もあります。
なお、中小M&A登録機関データベースに登録されている金融機関の内訳は以下のとおりです。特に中小M&Aを検討されている場合、自社のメインバンクが登録されているか確認したほうがよいと思います。

2022年9月30日現在160社

金融機関の種類法人数
都市銀行4(-)
地方銀行77(-)
信用金庫・信用組合60(▲1)
証券会社5(-)
保険会社1(-)
その他13(-)
合計160(▲1)
()書きは、2022年3月末時点との比較

商工団体、商工会、中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会等

中小企業の経営全般に関する身近な相談窓口です。しかしながら、中小M&A登録機関データベースへの登録はありません(2022年9月30日現在)。

士業等専門家

公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士等の資格を有する専門家のことです。
ただ通常、士業専門家には本来業務があります。しかし、少数ですがマッチング支援等を行う者もいます。なお、中小M&A登録機関データベースに登録されている士業等専門家の内訳は、以下のとおりです。特に中小M&Aを検討されている場合、自社の顧問税理士等の専門家が登録されているか確認したほうがよいと思います。ちなみに、当事務所は赤字の部分に登録されています。

2022年9月30日現在936機関

士業等専門家の種類法人個人計法人数個人数
弁護士47(▲3)13(▲2)34(▲1)
税理士547(▲54)328(▲28)219(▲26)
公認会計士271(▲12)122(▲5)149(▲7)
中小企業診断士71(+8)23(+3)48(+5)
合計936(▲61)486(▲32)450(▲29)
()書きは、2022年3月末時点との比較

M&Aプラットフォーマー

M&Aのプラットフォームを運営する支援機関のことです。ちなみに、プラットフォームとは、インターネット上のシステムを活用し、オンラインで譲渡側、譲受側のマッチングを提供するWEBサイトのことです。なお、2022年9月30日時点で登録機関データベースに登録されているのは19社です。

コンサルティング会社・その他

民間コンサルティング会社や銀行のコンサルティング会社のことです。「その他」には、行政書士事務所、社会保険労務士事務所なども含まれています。なお、2022年9月30日時点で登録機関データベースに登録されているのは533機関です。上記と同様に、中小M&Aを依頼しようとしているコンサルティング会社等が登録されているか、事前に確認したほうが無難です。

M&A支援機関に依頼する際の注意事項

経営者は、依頼先がM&A支援機関制度に登録されているか確認すべきです。登録されていないM&A支援機関が一概に悪いという訳ではありません。しかし、事業承継・引継ぎ補助金や情報提供窓口が使えないことは理解しておく必要があります。
また、「中小M&Aを支援する際の遵守事項」を遵守しているか確認が必要です。なお、当事務所では「中小M&Aを支援する際の遵守事項」を開示しています。
さらに、他のFA・仲介者にセカンド・オピニオンを求めることや他のFA・仲介者を利用してマッチングを試みることなど、禁止される行為なども事前に確認すべきです(専任条項)。また、契約期間、中途解約についても確認しておくのが無難です。

まとめ

さて今回は、M&A支援機関登録制度についてまとめました。ただM&A支援機関の数が多く、どこを選ぶか迷ってしまうと思います。そこで、選ぶ際の基準として、どれだけ自社に合った相手を探してくれるのか、専門用語を経営者自身が理解できるように説明してもらえるかどうか、このあたりが重要な判断材料になります。

【注意事項】
当ブログはできるだけ専門用語をかみ砕いてわかりやすさを優先しており、正確性を保証するものではございません。当ブログのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、当事務所は賠償責任を負いません。
したがって、実際に実行する場合は、必ず、顧問税理士等の専門家にご相談ください。
また法制度の改正等によって内容の見直しが必要な場合もございます。あらかじめご了承ください。

種山会計士

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