最終更新日:2022年9月2日
先代経営者の相続財産のほとんどが自社株式の場合、相続税の納税に困るケースが多いです。
今回は、会社の資金を使って 相続税を納税する方法について解説します。
【この記事を読んで得られること】
- 自社株式が、相続財産に占める割合が多い場合のデメリットとは?
- 相続時に会社のお金で相続税を支払う方法とは?
- このスキームの注意点は?
自社株式 が相続財産 に占める割合が多い場合
相続財産のほとんどが現金であれば、相続税 の納税に困ることはありません。相続した現金で納税すればよいからです。
自社株式は議決権の性質もあるため、第三者に売却して換金できません。売却してしまうと、議決権を後継者に集中できない恐れがあります。
その結果、資金不足のために相続税の納税に困ることがあります。
相続時金庫株とは?
「金庫株」とは、会社が自社の株式を自分で保有することです。
相続の際、自社株式を相続人から会社が買い取ることを「相続時金庫株」といいます。
相続時金庫株スキームにより、後継者は相続税の納税資金を確保でき、自社株式の分散を防止することができます。
イメージ図
T社の事例(ブログ「事業承継税制で猶予される相続税額は?」)で解説します。
この事例に「相続時金庫株」スキームを活用した場合、以下の図のようになります。
- 中小太郎が逝去した際に、T社株式を中小学が相続
- 中小学は、納税資金を確保するために、相続したT社株式の一部をT社に売却
- T社は、相続人の中小学からT社株式を取得し(自己株式となる)、売却代金を支払う
- 中小学は、T社株式売却代金から相続税の納税資金を捻出し、税務署に納税

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
相続時金庫株のメリットは?
相続時金庫株では、税制上の優遇措置があります。
- みなし配当課税の廃止
- 相続税の取得費加算の特例
この特例により、相続人が相続税の納税資金を確保するための手取りが増加します。
また、自社株式が他者に分散しないため、後継者が経営権を確保しやすくなります。なお、会社が取得した自社株式は議決権がなくなります
【参考】ブログ「会社支配に議決権はどの程度必要か?」
みなし配当課税の廃止
非上場株式を発行会社に譲渡した場合、譲渡対価のうち発行会社の資本金等の額を除く部分(利益積立金相当)について、みなし配当課税(総合課税で最高55.945%の累進課税)がかかり、売主の手取り額が減少してしまうという課題があります。
つまり、株主が会社に株式を売却して得た売却代金は、会社から見たら配当と同じなので、売却した株主に配当課税がかかるということです。
非上場株式を相続した個人が、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに発行会社に相続株式を売却した場合、みなし配当ではなく、譲渡益全体について譲渡益課税(20.315%)が適用される特例があります。税率が下がった結果、売主(この場合は後継者)の手取り額は増加します。
相続税の取得費加算の特例
自社株式にかかる相続税の額が、相続した財産のうちに占める譲渡した自社株式の割合に応じ、取得費に加算されます。つまり、自社株式の取得費に相続税額を加算することができ、その結果、譲渡益が減少し、税金も減少することから売主の手取り額が増加します。
【参考】国税庁タックスアンサー
「No.1477相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」
「No.1464譲渡した株式等の取得費」
相続時金庫株の留意点は?
相続時金庫株スキームを使う場合の留意点は以下のとおりです。実行の際は、必ず顧問会計士・税理士に確認してください。
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