最終更新日:2022年8月26日
事業を始める前の領収書は経費になる?経費になる場合の会計処理は?
今回は、開業前の経費(開業費)について、個人で開業、法人設立して開業、それぞれ解説します。
【この記事を読んで得られること】
- 開業前の領収書は経費になる?
- 開業費、創立費といった繰延資産の会計処理は?
- 繰延資産を使った節税とは?
そもそも「開業費」とは
事業を開始する前にかかった費用を「開業費」といいます。例えば、名刺の作成費や開店前のチラシ代、準備に使用したパソコン代などが該当します。さて結論からいうと、事業に関連していればすべて経費になります。それでは、そもそも開業日とはいつのことでしょうか。
個人の開業日はいつ?
個人の場合は、開業と決めた日が開業日となります。具体的には、税務署に開業届を出す際に、開業日を指定します。開業日は、独立した月の1日や初めて受注した日などを指定することが多いようです。私自身は、前職を3月31日に退職したため、4月1日を開業日としました。会計帳簿上は、この開業日が個人事業主の会計帳簿の期首となります。個人事業主の事業年度は1月~12月と決められていますので、開業日から12月31日までが第1期の事業年度となります。決算書を作成して翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告をします。
それでは法人を設立した場合はどのようになるのでしょうか。
法人の場合は「開業費」の他に「創立費」がある
「開業費」について、個人で開業した場合と法人を設立した場合を比較したものが以下の図です。

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
個人で開業した場合に出てくるのは「開業費」のみです。法人設立して開業する場合、法務局で会社設立の登記をした日が法人が誕生した日であり、法人設立登記日までにかかった費用を「創立費」、法人の設立後事業を開始するまで、開業準備のために特別に支出した費用を「開業費」といいます。
開業費の例示
- 名刺や印鑑などの作成費
- 事業の打ち合わせ費用
- 開業までの店舗や事務所の家賃
- 開店前のチラシ代
- パソコン購入費用 など
創立費の例示
- 会社を設立登記するために必要な登録免許税
- 創立総会の費用
- 発起人へ支払う報酬
- 事業に従事する使用人の給与
- 創立事務所などの金融機関の取扱手数料 など
法人設立で開業する場合の設立登記前の経費は?
上記の図を厳密に解釈すると、設立登記前に事業用に購入したパソコン購入費用は創立費となります。しかし、創立費として例示列挙されている項目は会社設立のために支出した費用に限定されていますので、実態を考慮して実務上は「開業費」に含める例が多いと思います(購入費用が10万円以上であれば、開業費(繰延資産)ではなく、減価償却資産の取り扱いになります)。
※なお、減価償却資産の取り扱いについては下記のブログの図表をご参照ください。
【参考】ブログ「ホームページ制作費用は資産計上?勘定科目は?」
開業費として遡れるのはいつまで?
例えば、10年前に購入したパソコン購入費用ですが、開業費に含めるというのは無理があると思います。いつまで遡れるか、特に規定はありませんが、一般的には6か月程度といわれています。
「特別に支出した費用のみ」の意味
法人の場合、開業のために「特別に支出した費用のみ」が開業費となります。したがって、設立登記以降の家賃は「開業費」勘定ではなく、「地代家賃」勘定を使用する必要があります。「特別に支出した費用」以外は経費にならない、という意味ではなく、本来の勘定科目を使用してください、という意味ですので、ご注意ください。
実は「開業費」は経費科目ではなく資産科目
開業費及び創立費は、貸借対照表の「繰延資産」という資産科目です。開業年度だけでなく、それ以降の将来の期間にも影響する資産(特定の費用:繰延資産)として計上し、次期以降の期間に配分します。なお、費用化する際は、開業費償却、創立費償却などの勘定科目を使用して経費計上します。下記は、個人の場合の仕訳事例です。
期首 :(借方)開業費 ×× (貸方)元入金××
決算時:(借方)開業費償却×× (貸方)開業費××
法人設立の場合、下記のブログで「創立費」の会計処理を時系列に仕訳計上していますので、ご参照ください。事例では、5年間で均等償却をしており、初年度の貸借対照表の繰延資産の部に「創立費」の未償却残高80千円が計上されています。償却額は、営業外費用に20千円計上されています。
【参考】ブログ「取引発生から決算書の作成まで」
開業費、創立費の会計処理
開業費、創立費(繰延資産)は、開業した年に一度に経費計上することができます。また、それ以降の事業年度で自由に経費処理することも可能です。これを専門用語で「任意償却」といいます。したがって、開業費、創立費は以下の会計処理のどれかを採用することが可能です。利益が出た事業年度に費用化することも可能です。これが節税につながります。
- 開業年に一度に費用化
- 任意の事業年度に費用化
- 5年間で均等償却
【参考】国税庁「償却期間経過後における開業費の任意償却」
【補足】設立費用は定款の相対的記載事項
株式会社を設立する際は、定款を作成する必要があります(会社法第26条)。
定款には、3種類の記載事項があり、会社設立費用は相対的記載事項です。制度趣旨は、発起人の濫用防止のため、定款への記載が要請されています。
- 絶対的記載事項(会社法第27条)
定款への記載が必須な事項です。
目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所 - 相対的記載事項(会社法第28条)
定款に記載しなくても定款自体の効力は有効ですが、定款で定めておかなければ規則として効力が認められない事項です。
設立時の現物出資、財産引き受け、発起人の報酬、会社設立費用など - 任意的記載事項(会社法第29条)
特段、記載がなくても定款が無効になるわけではなく、また、定款に記載しなくてもその効力が否定されるものではない事項です。
【参考】デジタル庁「e-GOV会社法」
定款に記載されていない設立費用は?
法人税法上は、設立のために通常必要な費用については、たとえ定款に記載がなくても、創立費とする旨の通達があります。したがって、法人税法上、創立費は定款記載の有無は問われません。
【参考】国税庁 法人税法基本通達8-1-1「定款記載を欠く設立費用」
まとめ
以上、開業前の事業に関連する領収書も、開業後に経費にすることが可能です。しかも、任意償却ですので、黒字になったときに経費にすることができます。開業当初は資金的に厳しい場合が多いので、こういった知識を活用して合法的な節税をしていくことも重要です。
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