
この記事では、自己負担2,000円で収まる「ふるさと納税の限度額(寄附額の目安)」の計算、寄附金が控除される時期、返礼品の課税関係について解説します。なお、令和7年分(2025年分)から所得税の基礎控除等が見直され、限度額が変わる可能性がありますので、試算時は「令和7年分(2025年分)対応」の前提かご注意ください。
本稿は、2022年12月13日の初出に最新情報を加えて更新しています。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分が選択した自治体に対して寄附を行った場合に、寄附金のうち 2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税から控除が受けられる制度です。
つまり、居住地以外の自治体に寄附することで、結果的に 居住地に納める税金(所得税・住民税)が減る仕組みです。地域振興や地方創生に貢献できる点も特徴です。
ただし、最低でも 2,000円の自己負担が必要です。寄附が多すぎると、自己負担が2,000円を超えるため注意してください。
ふるさと納税の計算方法
ふるさと納税は、寄附金のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税それぞれから控除されます。控除額は、次の①〜③の合計です。
①所得税からの控除額
(寄附金 - 2,000円)× 所得税率
※平成25年分〜令和19年分は、復興特別所得税を加味します(税率に上乗せ)。
②個人住民税からの控除(基本分)
(寄附金 - 2,000円)× 個人住民税所得割10%
③個人住民税からの控除(特例分)
(寄附金 - 2,000円)× (100% - 10%(基本分)- 所得税率)
※②までで控除しきれない分を③で調整します(ただし③には上限があります)。

出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」限度額の計算(自己負担2,000円で収まる上限)
ふるさと納税の控除には上限があります。ここでの「上限」は、控除額そのものの上限というより、控除計算の対象にできる寄附金額や、住民税(特例分)の上限がある、という意味です。
- 所得税:控除対象となる寄附金額は 総所得金額等の40%が上限
- 住民税(基本分):控除対象となる寄附金額は 総所得金額等の30%が上限
- 住民税(特例分):控除額は 住民税所得割額の20%が上限
実務上、「自己負担2,000円で収まる上限(限度額)」は、住民税(特例分)の上限(所得割額の20%)で決まることが多いです。
そのため、限度額の目安は次の式で整理できます。
(寄附金 - 2,000円)×(90% - 所得税率) ≦ 住民税所得割額 × 20%
よって、自己負担2,000円で収まる寄附金(限度額)の目安は、
寄附金 ≦(住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率)+2,000円
【参考】国税庁タックスアンサー「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
事例
以下の条件で、自己負担2,000円でふるさと納税(寄附金)の全額を控除できる金額を概算します。
※あくまで仮定です。実行時は個別事情(住宅ローン控除、iDeCo、医療費控除、副業など)を反映してください。
- 年齢:30歳
- 家族構成:独身(扶養なし)
- 年収(給与収入):400万円(他の収入なし)
- 社会保険料(本人負担):年間合計57.5万円(東京、協会けんぽ想定)
- 基礎控除(所得税):88万円(令和7年分・合計所得金額の区分により)
- 所得控除額:社会保険料+基礎控除=57.5万円+88万円=145.5万円
- 総所得金額等(給与所得のみ):給与所得=給与収入-給与所得控除=400万円-(400万円×20%+44万円)=276万円
- 課税所得(所得税):給与所得-所得控除額=276万円-145.5万円=130.5万円
- 所得税率:課税所得が195万円以下→税率5%(復興特別所得税は税額に2.1%上乗せ)
- 基礎控除(住民税):43万円
- 住民税の課税所得(概算):給与所得 276万円-(社会保険料57.5万円+住民税基礎控除43万円)=276万円-100.5万円=175.5万円
- 住民税所得割(概算):175.5万円×10%=17.5万円
限度額に関係する上限
①所得税(寄附金の上限)
総所得金額等×40%=276万円×40%=110.4万円
②住民税(基本分の寄附金上限)
総所得金額等×30%=276万円×30%=82.8万円
③住民税(特例分の上限)
住民税所得割×20%=17.5万円×20%=3.5万円
このケースでは、③(住民税特例分)の上限「3.5万円」が実務上の上限になります。
自己負担2,000円での限度額(目安)負担での限度額計算
寄附金 ≦(住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率)+2,000円
所得税率は5%に復興特別所得税を加味すると、5%×1.021=5.105%(目安)です。
よって、
(3.5万円 ÷(90%-5.105%))+2,000円
=(3.5万円 ÷ 84.895%)+2,000円
=41,227円+2,000円
=43,227円(概算)
したがって、自己負担2,000円で収まる寄附金の目安は 約43,000円です。
控除限度額のシミュレーション
限度額(自己負担2,000円で収まる目安)は、各サイトのシミュレーションが最も簡単です。
手順は次の流れが安全です。
- まず「年収・家族構成」で簡易試算
- 次に「社会保険料・各種控除」まで入る詳細版で精度を上げる
- 迷う場合は、限度額ぴったりではなく 少し低めに寄附する
また、令和7年分(2025年分)は所得税の基礎控除等が見直され、年末調整から反映されます。シミュレーターが 令和7年分(2025年分)対応か、画面や注意書きで確認してください。未対応の可能性がある場合は寄附額を控えめに設定するのが安全です。
- 楽天ふるさと納税:詳細版シミュレーター
- ふるさとチョイス:控除上限額シミュレーション
- さとふる :シミュレーション&早見表
- ふるなび :控除シミュレーションと計算方法
- ふるさとぷらす :ふるさと納税 控除の目安と限度額の計算方法
寄附金が控除される時期
通常、1月〜12月の所得を翌年2月16日〜3月15日に確定申告します。
ふるさと納税は、所得税と住民税の両方から控除されます。ただし 控除される時期が違う点がわかりにくさの原因です。
- 所得税:寄附した年分の所得税から控除(確定申告なら還付の形が多い)
- 住民税:翌年度分の住民税から控除(翌年6月以降の住民税に反映)

出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」給与所得者等で、寄附先自治体が5団体以内などの要件を満たす場合は、ワンストップ特例制度も利用できます。確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請が無効になる点に注意してください。
返礼品に関する課税関係
返礼品を受けた場合の経済的利益は、所得税法上 一時所得に該当します。
一時所得には 特別控除50万円があります。返礼品以外に一時所得がなければ、通常は課税関係が生じないケースが多いです。
【参考】国税庁「「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係」
まとめ
ふるさと納税の限度額は計算がわかりにくく、給与以外の所得があるとさらに複雑になります。さらに年末は、所得が確定していない段階で限度額を“推定”しなければなりません。
控除は所得税と住民税にまたがり、上限は主に住民税(特例分=所得割額の20%が限度)で決まります。
まずは「昨年の源泉徴収票」に加え、「今年の給与明細・賞与見込み・副業等の見込み」も反映し、令和7年分対応のシミュレーションで試算したうえで、少し余裕を残して寄附するのが安全です。
