種山会計士

仕入先(支払先)にインボイス番号を確認する際の注意点をまとめました。
課税事業者かつ買手側の事業者が、仕入先(支払先)へ確認する際の注意点とは?
・インボイス制度を発端とした取引条件交渉時における注意点とは?
・仕入先(支払先)へは、具体的にどのように確認する?

インボイス制度はどの立場で考えるかが重要

課税事業者と免税事業者、買手側と売手側、4つのパターンがあります。
今回のブログは「課税事業者」かつ「買手側」の話です。下記ではが該当します。

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仕入先(支払先)の状況を把握する

今後は、仕入先(支払先)を以下の3つに分けて管理する必要があります。

  1. インボイス登録事業者
  2. インボイス未登録事業者(これから登録予定)
  3. 免税事業者

インボイス登録状況を確認する時期

支払先にインボイス登録を確認する時期としては、契約前(取引前)か契約後(取引後)に分かれます。また、既存の取引先か新規の取引先かで分かれます。取引後の条件変更は、下請法や独占禁止法に抵触するリスクがあります。したがって、契約前(取引前)に必ずインボイス登録状況を確認します。

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下請法や独占禁止法違反になる事例

公正取引委員会等から公表されている3つの事例を紹介します。

取引完了後に免税事業者と判明して代金を減額したケース

取引後の請求段階で代金を減額した事例です。免税事業者であることが取引後に発覚し、消費税額分を減額しました。この場合、「下請代金の減額」として下請法違反になります。

出典:公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

課税事業者になったにもかかわらず価格交渉に応じないケース

まず、仕入先が免税事業者であることを前提に価格を決定。その後、仕入先が要請にもとづいて課税事業者へ転換・インボイス登録。それにもかかわらず、買手側が仕入先からの価格交渉に応じなかった事例です。「買いたたき」として下請法違反になる可能性があります。

出典:公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

優先的地位を利用して仕入先に課税転換するように強制したケース

買手側が優先的な地位を利用して仕入先(支払先)に不利益を与えた場合、独占禁止法上問題になる可能性があります。なお、課税事業者への転換要請自体は独占禁止法上問題になりません。

出典:公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

仕入先(支払先)にインボイス番号を確認する方法

仕入先(支払先)へインボイス登録確認ですが、上記の事例のように、聞き方によっては下請防止法等に抵触するリスクがあります。
したがって、リスク回避のため、自社のインボイス番号を通知するとともに、先方のインボイス番号登録状況を書面で確認する方法が考えられます。以下の文書例が参考になると思います(なお、WEBサイトへの掲載は、出典元を明記してくれれば引用可能と一般社団法人 日本加工食品卸協会様よりご承諾を頂いております)。

取引先への通知の文書例

出典:一般社団法人 日本加工食品卸協会「インボイス制度対応企業間取引の手引き第2版

【2023年4月3日追記】
日本商工会議所発行の冊子「今すぐ確認!中小企業・小規模事業者のためのインボイス制度対策【第3版】」P22において、「適格請求書発行事業者登録番号に関するお願いについて」の書式がWordでダウンロードできます。

インボイス番号をインターネットで検索する方法

法人のインボイス番号は、法人番号の先頭に「T」をつけたものとなります。仕入先が法人の場合は、法人番号検索サイトで法人番号を検索し、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録しているか否か検索することができます。仕入先が個人事業主の場合は、法人のように検索できませんので、直接確認することが必要です。

まとめ

請求書を受け取った時点で、インボイス未登録が発覚したのではタイミングとして遅いです。今後も継続する取引先であれば、インボイス制度開始前に登録の有無を確認していると思います。しかし、今後登録取り消しも可能ですので、定期的に国税庁のサイトで確認が必要です。