種山会計士

2023年10月1日よりインボイス制度が開始されます。小規模事業者の方で、消費税を納税していない方(以下、「消費税免税事業者」)も多いと思います。
消費税免税事業者(売手側)のインボイス対応について解説しました。
・消費税の免税事業者は課税事業者になるべきか?
・課税事業者になってインボイス登録する際に、いつまでに何をすればよいのか?
・インボイス発行事業者登録後に注意すべき点は?

【参考】ブログ「インボイス制度、自社は何をすればよいのか?

消費税免税事業者で売手側のインボイス対応

免税事業者の方は、インボイス発行事業者に登録して課税事業者になるべきか、悩ましいところです。免税事業者の方からよく相談されるのは、主に以下の3つです。

  1. 免税事業者だが、インボイス発行事業者に登録して課税事業者になるべきか?
  2. インボイス発行事業者になる場合、いつまでに何をすればよいのか?
  3. インボイス発行事業者登録後に注意すべき点は?

1.免税事業者だが、課税事業者になるべきか?

公正取引委員会より以下のQ&Aが公表されています。
免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(2022年3月8日改正)
その地位を利用して相手に不利益を与えることは、「優先的地位の濫用」として独占禁止法に抵触する可能性がある旨の記載があります。

買手側が一般的な消費者であったり、簡易課税制度を採用していることが判明している場合などは、免税事業者のままでも大丈夫です。しかし、取引先が法人の場合、インボイス発行事業者として登録したほうが無難と思われます(現時点での個人的な意見です)。知らぬ間に取引先から外されていたり、今後どのようなことが起きるか想定できません。新たに取引先を開拓する資金・労力と消費税の金額も比較してみて下さい。売上高を今後どのように増大させていくか、検討する良い機会とも言えます。

2.インボイス発行事業者になる場合、いつまでに何をすればよいのか?

制度開始日(2023年10月1日)からインボイス発行事業者になるには、2023年3月31日までに所轄の税務署に登録申請する必要があります。つまり、半年前までに登録する必要があります。

なお、免税事業者が登録を受けるためには、原則として、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になる必要があります。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくてもよい特例がある

特例として、適格請求書発行事業者登録簿に登載された日(以下「登録日」といいます。)が2023年10月1日から2029年9月30日までの日の属する課税期間中である場合は、課税選択届出書を提出しなくても登録を受けることができます。

(例)免税事業者(法人・個人ともに)が、2023年3月末までにインボイス発行事業者登録すれば、2023年10月1日からインボイス発行事業者となります。
つまり、この場合、2023年3月末以前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる必要はありません。
また、個人事業主が2022年中にインボイス発行事業者登録をしても、2022年分の消費税の申告は必要ありません。
下記に、国税庁から公表されている「インボイス制度に関するQ&A問7、8、9」を引用します。このQ&Aは文章が難しいので、一度、熟読されることをお勧めします。

【参考】国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問7、問8、問9

登録に係る経過措置についてです。

インボイススケジュール
出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(令和4年4月改訂版)問7

免税事業者が登録を受ける場合の特例についてです。

出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(令和4年4月改訂版)問8

課税事業者として消費税の確定申告が必要となる期間についてです。

出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(令和4年4月改訂版)問9

3.インボイス発行事業者登録後に注意すべき点は?

  • 消費税の課税事業者として、消費税の納税義務が生じます。
  • 会計ソフトへの仕訳入力も、毎回消費税を意識して入力することになります。したがって、今まで以上に手間がかかります。
  • 法人個人ともに、消費税申告書を作成義務があります。
  • 制度開始日は2023年10月1日です。期の途中から消費税課税事業者となる法人が多いと思います。したがって、制度開始日を含む事業年度は、会計ソフトの消費税の処理設定について確認が必要です。
  • 消費税計算が簡単な「簡易課税制度」を採用するか検討しておく必要があります。特例により、課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要はありません。
  • 新規に税理士に依頼する場合、税理士報酬が追加コストとなります。また、自社に合った税理士を探すにも時間がかかります。
  • インボイスに登録したものの取りやめる場合、「登録取消届出書」の提出が必要です。ただ時期によっては、翌々事業年度からとなるため注意が必要です。

【参考】国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問10

簡易課税制度を選択する場合の手続についてです。

出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(令和4年4月改訂版)問10
 国税庁タックスアンサー「No.6505 簡易課税制度

【参考】国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問14

インボイス発行事業者登録を取りやめる場合の手続についてです。

出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(令和4年4月改訂版)問14

【参考】国税庁「基礎から学ぶ消費税とインボイス制度(免税事業者の方向け)【令和4年5月配信】

まとめ

さて、いかがでしたか。今回は、小規模事業者の方からよく相談されるインボイス対応についてまとめました。いま免税事業者でも、将来売上高1,000万円を突破すれば課税事業者となります。少し早めに消費税の納税のタイミングがきたと自分を奮い立たせるのもよいと思います。