最終更新日:2022年12月28日
2022年も残り僅かです。今回は、毎年110万円を生前贈与した場合の相続税について、税制改正の影響をシミュレーションしました。
【参考】ブログ「2023年度税制改正大綱~相続税と贈与税の一体化~」
【この記事を読んで得られること】
- 暦年課税で毎年110万円を生前贈与した場合は?
- 相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合は?
- 2023年まで暦年課税、以後は相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合は?
110万円生前贈与シミュレーション
以下の前提条件でシミュレーションします。なお、現時点での情報に基づいたシミュレーションのため、今後変更となる可能性があります。
前提条件

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
- 甲(親:70歳)は現金1億円を所有
- 配偶者はすでに死亡
- 子は1人(40歳)
- 生活費による相続財産の減少は考慮しない
- 甲(親)は2031年1月に相続開始と仮定
- 2030年12月時点での相続財産は90,100千円(=100,000-1,100×9年分)と仮定
- 連年贈与課税については考慮しない
- 毎年の贈与の申告は、翌年2月1日~3月15日の間に、もらった人(子)が行う
- 生前贈与をしなかった場合
- 暦年課税で毎年110万円を生前贈与した場合
- 相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合
- 2023年まで暦年課税、以後は相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合
生前贈与しなかった場合
相続財産100,000千円で子が負担する相続税額は12,200千円です。

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暦年課税で毎年110万円を生前贈与した場合
このケースでは、2024年の贈与から影響が出ます。つまり、2024年~2027年の贈与金額のうち、累計1,000千円が相続財産加算額から控除されます。したがって、最終的に子が負担する相続税額は、11,240千円となります。なお、毎年の税務申告が不要であることに変更はありません。

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合
このケースでも、2024年の贈与から影響が出ます。つまり、2024年以降は、毎年1,100千円は基礎控除として相続財産に加算不要となります。したがって、最終的に子が負担する相続税額は、9,890千円となります。なお、2024年以降は、毎年の税務申告は不要となります。

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2023年まで暦年課税、以後は相続時精算課税で毎年110万円を生前贈与した場合
税制改正施行前(2022、2023年)は暦年課税贈与、施行後(2024~)は精算課税贈与をする場合です。このケースでは、両制度の基礎控除をうまく活用しています。したがって、最終的に子が負担する相続税額は、9,230千円となります。なお、毎年の税務申告は不要となります(2024年以降、暦年課税贈与と精算課税贈与で区別がつかなくなるため、今後何らかの手続が追加されるかもしれません)。

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
まとめ
今回は、2023年度税制改正の影響についてシミュレーションしました。生前贈与を全くしない場合の相続税(12,200千円)と暦年課税贈与と精算課税贈与を組み合わせた場合の相続税(9,230千円)では、2,970千円の差がでました。この金額を多いとみるか少ないとみるかは人それぞれです。生活費として消費、税理士報酬などを加味するとさらに差は縮まりそうです。個人的には、「節税対策」よりも「争族対策」を優先すべきと思います。
現実はさらに複雑ですが、今後は以前にも増して、計画的な事業承継対策(資産承継対策)が重要になってきます。
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