非上場株式の評価はどう変わるのか|国税庁有識者会議(第4回)

このコラムは、2026年7月3日に開催された国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第4回)」の公表資料をもとに、非上場株式(自社株)の評価方法をめぐる見直し議論の要点と、事業承継を検討する経営者への影響を整理したものです。

目次

先に結論を示します。改正はまだ決定していません。ただし、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式という評価体系そのものが議論の対象となっており、報道では早ければ2028年(令和10年)からの新ルール適用という想定も示されています。自社株の評価額を前提にした承継対策も、例外ではありません。将来のルール変更を織り込んだ設計が必要です。

契機は2024年(令和6年)11月の会計検査院の指摘です。検査では、評価方式間の乖離が定量的に示されました。例えば、類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の27.2%です。規模間の公平性にも、問題があるとされています。

これを受け、国税庁は有識者会議を設置しました。2026年4月の第1回以降、月次で開催されています。第4回は、2026年7月3日開催です。報道では、令和9年度税制改正大綱への反映が見込まれています。パブリックコメントを経る予定です。早ければ2028年(令和10年)から適用という想定です。ただし、改正の有無・内容・時期は未定です。

第4回資料では、評価額の圧縮スキームの存在も示されました。例えば、グループ法人税制や組織再編を利用した手法です。無議決権株式で配当還元方式を悪用する例もあります。国税庁の方針は、個別否認(評価通達6項)中心からの転換です。通達改正により、納税者の予測可能性を確保する方針です。

委員の意見は五つに整理されています。いずれも賛否が併記された検討段階の論点です。

  • 評価方式の一本化:インカムアプローチ案と純資産価額への統一案があります。類似業種比準方式を残すべきという慎重論もあります。
  • 類似業種比準方式:理論的な裏付けが弱く、廃止論もあります。株価操作に悪用されやすい点も指摘されています。
  • 純資産価額方式:継続企業を清算価値で評価する合理性に疑問の声があります。株式価値の下限値とする見解もあります。
  • 配当還元方式:還元率10%の見直しは、従業員持株会に影響します。対象株主の判定方式も論点です。
  • 特定の評価会社:判定は一時点のみです。赤字が続くと評価額が上昇する矛盾も指摘されています。

資料末尾で、当局が委員に意見を求めた事項は次の6項目です。

  1. M&Aの評価方法等も参考にした抜本的な見直しの検討
  2. 評価方式の一本化の検討
  3. 今後の類似業種比準方式の在り方
  4. 純資産価額方式を特定の評価会社用の方式として存置すること
  5. 配当還元方式の対象株主の範囲・従業員持株会との関係の整理
  6. 少なくとも資産管理会社は純資産価額方式で評価すること

特に6項目は影響が大きい論点です。資産管理会社(持株会社)の評価が変わる可能性があります。一律に純資産価額方式となる場合、影響は大きくなります。現在の評価額を前提とした承継計画は、見直しが必要になり得ます。

別添資料では、8件のスキーム事例が示されました。例えば、会社規模の操作による株価圧縮です。株主構成を操作し、配当還元方式を適用させる例もあります。循環的な貸付・寄附で債務を作出する例もあります。評価額の圧縮幅も明示されています(例:評価額▲100億円)。当局が手法を具体的に把握していることがうかがえます。

金融機関などから同種の提案を受けている場合は、再点検が必要です。将来の通達改正や個別否認のリスクも踏まえた対応が必要です。

三点に整理できます。

第一に、通常の承継対策を否定する議論ではありません。スキーム対策をしていない納税者への配慮も必要という意見です。

第二に、評価の見直しと事業承継税制の恒久化・拡充を一体で議論すべきとの意見が複数出ています。背景には、事業承継税制の恒久化・拡充を求める声があります。参考として、ドイツの制度移行例が資料で紹介されています。ドイツは評価を通常価額に統一し、税制側の特例で承継に配慮しています。日本でも同様の移行が論点になり得ます。

第三に、時間軸です。株価対策や株式移転の設計は一般に1〜3年程度を要します。報道の想定どおり2028年適用となる場合、準備期間は限られます。改正内容が確定するまでは、複数シナリオでの比較が有効です。現行ルール前提の計画と、改正シナリオを織り込んだ計画の両方です。比較しておくことで、判断のやり直しを減らせます。

本コラムは検討段階の論点整理です。改正の有無・内容・時期はいずれも未定です。適用時期に関する記述は報道ベースの観測です。個別の対策の要否は、貴社の株主構成・会社規模・資産構成によって異なります。

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この記事を書いた人

種山公認会計士・税理士事務所/代表
TMC 株式会社/代表取締役
公認会計士・税理士・中小企業診断士

大学卒業後、大手監査法人で上場企業の法定監査や上場準備支援等に従事。その後、証券会社で中小企業オーナー向けの自社株対策・資本政策、税理士法人で税務実務、経営コンサルティング会社で財務支援を経験し独立。実務経験は通算27年。

現在は、東京・日本橋を拠点に、中小企業のオーナー経営者を対象として、
・自社株評価・株価対策
・贈与・相続・M&Aを含む事業承継対策
・財務改善・資金繰り・銀行対応
・後継者・幹部の育成と会議運営の支援
を行っています。

相続税対策や株価対策にとどまらず、「会社を誰に、どのように引き継ぐか」という意思決定を、経営者・後継者・ご親族が納得して行えるよう、数字と経営の両面から支援することを専門としています。

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