種山会計士

・現経営者が感じる後継者に不足している能力とは?
・中小企業の社長にとって人任せにしてはならない分野とは?
について解説します。

※この記事は、2021年10月12日に初公開した記事に最新情報を加味して更新したものです。

現経営者が後継者に不足していると思う能力は?

2013年に現経営者にアンケートした結果は以下のとおりです。  

出典:中小企業庁「中小企業白書2013年版

経営者の約4割は、後継者には「財務・会計の知識」が不足している、と考えています。

他の項目「自社の事業・業界への精通」、「次の経営者としての自覚」、「リーダーシップ」などは普段の仕事の中で習得していくものです。
しかし、経営数字については自発的に学ばないと身につきません。現実は、苦手意識をもったままの社長も多い印象です。

私自身、資金繰りが悪化している経営者からの相談を受けることも多いです。しかし、そういった経営者で経営数字を自分でしっかりと把握していた方はほとんどいません。
またそういった経営者に限って必ず言うセリフがあります。

会社の数字については、顧問税理士に任せていますので

これはダメです。

「餅は餅屋」ということわざがあります。しかし、自社の経営数字は社長が把握していなければダメです。
会社にとっての資金は、人間の血に該当します。
したがって、資金の流れを社長が常に把握して、会社の健康状態を把握できる体制にしておくべきです。

経営数字の把握には3つのレベルがある

それでは「財務・会計の知識」について、どの程度まで押さえておけばよいのでしょうか。
経営数字の把握には、
決算書を①読める、②作成できる、③経営に活かす、
の3つのレベルがあります。

決算書を「読む」ことができる

経営者として必要最低限押さえておきたいレベルです。決算書を作成することと読めることは、かなり差があります。しかし、決算書を読むことさえできれば、会社の健康状態を把握することができます。

決算書を「作成」できる

日々の仕訳や決算仕訳を入力して、自分で決算書を作成することができるレベルです。出来上がった決算書をもとに、法人税等の税務申告書が作成されます。通常、会計基準や法人税、消費税などの税法を知らないと日々の仕訳もわかりません。そのため、会計事務所に依頼しているケースがほとんどです。「自計化」といって、自社で記帳まで行う会社もあります。「自計化」していれば、自社で経営数字をタイムリーに把握することができます。

【参考】ブログ「取引発生から決算書の作成まで

決算書を「経営に活かす」ことができる

決算書データを使用して、粗利率や労働分配率等の推移分析から、会社の状態を把握し、経営計画の策定の基礎にします。このレベルまでできる経営者の方には、なかなかお目にかかったことはありません。ここは外部専門家と一緒にやっていくのが効率的です。

まとめ

中小企業にとって、「会社の売上」「会社の経営数字の把握」は、社長がやるべきことであって、他の人に任せるところではありません。前者は経営の攻めの部分、後者は守りの部分です。攻めと守り、バランスよく対応することが重要です。