公認会計士・税理士 種山 和男 のブログ

事業承継の相談相手は?

最終更新日:2022年8月8日

今回は、経営者が事業承継を誰に相談しているのか、解説します。

【この記事を読んで得られること】

  • 経営者は引退に向けて誰に相談しているか?
  • 外部の相談相手で多いのは?
  • 事業承継を相談する際の注意点とは?

自分の会社を誰に継がせるか

経営者にとって事業承継は最後の重要課題です。
では実際に、事業承継について「誰に」「何を」相談しているのでしょうか?
中小企業庁「中小企業白書2019年版」のデータをもとにみていきます。

約半数は家族・親族など身近な相手への相談が中心

経営者が引退に向けて相談した相手は以下のとおりです。

以下では、「事業承継をした経営者」の相談相手上位5者を抜粋しました。

  1. 家族・親族          49.9%
  2. 後継者            39.4%
  3. 外部の専門機関・専門家    30.9%
  4. 役員・従業員         17.4%
  5. 特にいない          15.3%

1位は「家族・親族」ですが、それでも半数程度です。複数回答にもかかわらず、約半数しか「家族・親族」に相談していません。なお、廃業した経営者の67.2%は「家族・親族」に相談しています。
「相談相手がいない」も15.3%占めています。なお、この選択肢を選んだ時点で他の選択肢は選ばないため単独回答です。従って、残りの約85%が、「家族・親族」「後継者」「外部の専門機関・専門家」「役員・従業員」に相談しています。

外部相談相手は「公認会計士・税理士」が72.5%

次に第3位の「外部機関・専門家」の内訳をみていきます。
72.5%の経営者が「公認会計士・税理士」に相談しています。なお、廃業した経営者では87.6%にもなります。普段から接点が多く、かつ、会社財産の状況を把握しているためと考えらえます。
また事業承継や廃業にあたって、税金がどの程度かかるのかは最大の関心事です。なお、個別具体的な税務相談は、税理士法上、税理士しかできません

次に多いのは「取引先金融機関」です。金融機関は、融資先であれば会社の状況をある程度把握しており、また融資先であれば定期的に経営者と接点をもっています。事業性評価の観点から、企業の事業内容や成長可能性までを適切に評価し、融資や助言を行い企業や産業の成長の支援に積極的な金融機関もあります。ただ経営者にとって、お金を借りている相手に会社の不利になるようなことを積極的に言う動機はありません。そのため、「取引金融機関」側からアクションがあったと想定されます。そもそも事業承継について銀行に相談できると思っていない経営者が大半です。

その他の専門機関・専門家の割合が低いのは、そもそも中小企業経営者と接点が多くない、経営者自身が誰に相談してよいものか把握していない、事業承継という課題自体に緊急性がなく、相談相手をわざわざ探す欲求がない、知名度が低い、などが原因として考えられます。

外部専門機関・専門家は目的に応じて

経営者が実際に相談して役に立ったことをまとめたのが下記の表です。

 上記の共通点として、

  • 「引退するまでの手順や計画を整理できた」
  • 「事業継続の可否を決定することができた」

の割合が高いです。

 「事業の引継ぎ先を見つけることができた」で役立った専門機関・専門家は、「取引先金融機関」「事業承継・引継ぎ支援センター」です。

 後継者不在の中小企業にとって、良い条件の買い手候補とのマッチングが重要であり、買い手候補のストックをもつ両者が有効な相談先との回答です。

以上、各専門機関・専門家の得意分野については、事前に把握しておくことをお勧めします。

結局、「誰に」「何を」相談したら良いのか?

事業承継の問題は多岐にわたります。
「誰に」「何を」相談してよいものか、ほとんどの経営者にはわかりにくいと思います。
事業承継は、相続の問題だと思っている経営者の方も多いです。

下記は「事業承継の相談先」の一例です。相談内容に応じて相談先が多岐にわたることがわかります。

上記以外にも、公的な相談窓口や民間のM&A仲介会社、コンサル会社もあります。

具体的な相談対応

以上より、相談内容に応じて、相手を選ぶ理由が理解できたと思います。
しかし、身近に相談相手がいない経営者の方も多いと思います。また費用の問題もあります。個人的な意見ですが、以下の対応が現実的だと思います。

顧問の「公認会計士・税理士」がいる場合

まずは事業承継について相談してみてください。ただ事業承継対策は、相続税対策だけではありません。それ以外の対策についてどのように対応するのか、確認が必要です。

「誰に」「何を」相談すればよいか、を経営者自身も事前に把握しておくべきです。
もしわからなければ、公的機関の無料相談窓口でセカンドオピニオンをもらってもよいと思います。

後継者候補が不在であれば、まずは公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターに相談することをお勧めします。相談員は地域金融機関OBのケースが多いようです。最近は公的支援機関で着手金を負担してくれるケースもあり、調べてみるのもよいかもしれません。

顧問の「公認会計士・税理士」がいない場合(顧問がいても事業承継支援に対応できない場合)

 まずは、公的支援機関(近くの商工会議所・商工会、都道府県の中小企業支援財団法人、事業承継・引継ぎ支援センター等)に相談してみることをお勧めします。
可能な限り、複数の専門家・支援機関に相談することをお勧めします。

まとめ

事業承継対策は多岐な分野にまたがります。従って、「誰に」「何を」相談するのか、経営者自身も理解しておく必要があります。
理想的には、事業承継対策全般をコーディネートしてくれる参謀型パートナーがいるのがベストです。

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実際に実行する場合は、顧問税理士等の専門家に必ずご相談ください。
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