種山会計士

・「中小M&Aガイドライン」はなぜ策定されたのか?
・実際にM&Aに取り組んだ経営者からの声とは?
・「中小M&Aガイドライン」の骨子はなぜ二部構成?

※この記事は、2022年2月22日に初公開した記事に最新情報を加味して更新したものです。

「中小M&Aガイドライン」とは

2020年3月31日に中小企業庁より「中小M&Aガイドライン」が公表され、さらに1年半後の2021年8月に、M&A支援機関登録制度(中小企業庁)が創設されました。
この登録制度において、M&A支援機関は「中小M&Aガイドライン」の遵守義務があります。

「中小M&Aガイドライン」策定の背景

統計上、2025年までに平均引退年齢70歳を超える中小・小規模事業者は約245万人です。
そのうち約半数の127万人の経営者は、後継者が未定あるいは不在です。
したがって、このままでは廃業せざるを得ない中小零細企業はかなりの数になります。

このまま中小・零細企業の廃業が進むとなると、
従業員の雇用や技術力の喪失
サプライチェーンの断絶による地域経済の悪化、など
日本国内産業に与える影響は非常に大きなものになります。

ただ後継者が不在だからといって、第三者へ会社を売却することに抵抗がある経営者はまだまだ多いと感じます。
また、M&Aは大企業の話であって、自社には関係ないと思っている経営者の方も多いです。
さらに、M&Aに理解を得た経営者の方でも、知見・経験がない方がほとんどです。
その結果、第三者へ承継できずに廃業してしまうケースも少なくありません。

このような状況の中、
事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的支援機関の充実、
中小企業を対象とした民間のM&A会社の増加など、
第三者承継の環境も整備されつつあります
しかし、こういった過渡期においては、制度などの環境を整備する必要があります。
そこで、不慣れなM&Aから中小企業経営者を保護するために、「中小M&Aガイドライン」が策定されました。  

「中小M&A」に取り組んだ経営者の声

後継者不在企業が増加している中で、実際にM&Aに取り組んだ中小企業経営者からの悲痛な声が無視できないほど大きくなってきました。そこで「中小企業M&Aガイドライン」が策定されました。そのため、ガイドラインには中小企業経営者の声も反映されています。

【売手側】

  • 相場観がわからず、想定を上回る手数料だった。
  • 自社の正当な価値がわからないままM&Aの手続が進んでしまった
  • M&A専門業者が信用できない
  • M&Aの知見がなく、よくわからないまま契約書にサインせざるをえなかった。  など

【買手側】

  • M&A実施後、デューデリジェンス(DD)で出てこなかった問題がでてきた。
  • デューデリジェンス(DD)が甘かった。
  • M&A専門業者が信用できない。
  • M&A実施後、仲介業者は何もサポートしてくれなかった。   など

「中小M&Aガイドライン」の骨子

さて、前述の理由により策定された「中小M&Aガイドライン」ですが、内容は「中小企業経営者」、「支援機関」の二部構成となっています。後継者不在企業だけでなく、支援機関にも基本姿勢、考え方などを明記しています。これは、M&Aに不慣れな支援機関も多いためと考えられます。

「中小M&Aガイドライン(第2版)」

「中小M&Aガイドライン(初版)」の発行から約3年が経過して、特に仲介・FA(フィナンシャル・アドバイザー)に関して、契約のわかりにくさや、担当者による支援の質のばらつき、手数料体系のわかりにくさ(最低手数料の適用)等の課題が見受けられるようになってきたため、2023年9月22日にガイドラインが改訂されました。また、2024年7月以降、M&A登録支援機関の手数料体系が「M&A支援機関登録制度(中小企業庁)」のウェブサイトに掲載されることになりましたので、M&A会社間の手数料比較がやりやすくなります。

【参考】経済産業省「中小M&Aガイドライン(第2版)」を策定しました」

まとめ

さて今回は「中小M&Aガイドライン」の概要を解説しました。ほとんどの中小企業経営者にとって、M&Aは最初で最後の未知のものだと思います。ガイドラインには、専門家・支援機関についての記載もあります。良い専門家と巡り会えるかどうかが、成功or失敗のカギを握ると思いますので、M&Aを考えている中小企業経営者の方はぜひ一読をお勧めします。