中小企業の経営者が、M&A会社に依頼した場合の手数料について解説します。
中小M&Aにおける業務内容
M&A支援者の業務内容について、中小M&Aフロー図の工程をみていきます。段階ごとに求められる業務内容が異なることが特徴です。M&A専門業者はほぼすべての段階で関与しています。M&A会社の料金が高い理由は専門人材の人件費のためです。担当者は、広範囲な専門的知識・経験が求められます。
【参考】ブログ「中小企業がM&A会社に相談したら、、、」
手数料の体系
M&A専門業者に依頼した際の各種手数料は以下のとおりです。手数料の金額や体系には法規制がなく、各仲介者・FAによって異なります。なお、仲介者の場合、譲渡側企業、譲受側企業の双方に対して手数料を請求します。
- 相談料 (相談時に支払う)
- 着手金 (仲介契約・FA契約締結時に支払う)
- 月額報酬(一定額を毎月払う)
- タイムチャージ(時間単価と稼働時間で発生する手数料を一定期間ごとに払う)
- 中間金 (例えば、基本合意締結時等、案件完了前の一定時点に支払う)
- 成功報酬(クロージング時等の案件完了時に支払う)
相談料(相談時に支払う)
ほとんどのM&A専門業者の相談料は無料のケースが大半です。営業の一環といえます。
着手金(仲介契約あるいはFA契約締結時に支払う)
M&A専門業者の増加により競争が激化しており、着手金は無料のケースが増えています。なお、成功報酬には含まれないケースがほとんどですが、事前説明の際に確認が必要です。【事例1】【事例3】
月額報酬(一定額を毎月支払う)
定額顧問料、リテーナーフィーと呼ばれることもあります。着手金と同様の理由により、月額報酬は無料で、成功報酬のみのケースも多いです。ただ成功報酬のみだと、無理に成約させようとする等のデメリットもありますので注意が必要です。なお、成功報酬に充当される場合とされない場合があります。また、毎月発生しますので、契約期間も含めて、事前説明の際に確認が必要です。【事例3】
タイムチャージ(時間単価と稼働時間で発生する手数料を一定期間ごとに払う)
月額報酬と同様に、タイムチャージはせずに、成功報酬のみのケースも多いです。
中間金(例えば、基本合意締結時等、案件完了前の一定時点に支払う)
成功報酬に充当される場合とされない場合があります。事前説明の際に確認が必要です。【事例2】
成功報酬(クロージング時等の案件完了時に支払う)
主に以下の3つの「基準となる価額」のいずれかに、一定の方式(レーマン方式)に則った計算をするケースがほとんどです。「基準となる価額」はM&A専門業者によって異なります事前説明の際に確認が必要です。
①譲渡額(譲受額)
譲渡した(譲り受けた)金額そのものを基準とします。この場合、譲渡側は譲渡額が高くなれば手数料も高くなるため合理性があります。しかし、譲受側は、譲受額が高くなれば負担感が増すため、双方を定額とするケースもあります。【事例1】【事例3】【事例4】
②移動総資産額
主に譲渡額に負債額を加えた金額です。譲渡側の(移動)総資産額は、その事業規模に連動して大きくなる傾向にあるという考え方による。したがって、同じ譲渡額であっても、負債の金額が大きいほうが手数料は高くなります。【事例2】
③純資産額
資産と負債の差額。譲渡側が小規模企業の場合、簿価純資産額を基準とすることがある。なお、譲渡側が債務超過の場合、純資産がマイナスになるため、手数料を定額にするか、②移動総資産額を基準とすることが多い。
レーマン方式とは
①~③の価格を基に報酬を算定する手法として、レーマン方式が採用されることが多いです。レーマン方式とは、「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して報酬額を算定する手法のことです。上記で説明した「基準となる価額」の違いが手数料の違いとなりますので、契約前にM&A専門業者に確認することが重要です。
最低手数料
譲渡側が小規模の場合、レーマン方式だと「基準となる価額」が小さく、十分な成功報酬が確保できないケースもあります。これに備えて、M&A専門業者は最低手数料を設定している場合がほとんどです。以下は、最低手数料の分布図です。
手数料の具体例
具体例を4つ掲載します。いずれも「中小M&Aガイドライン(第3版)」(中小企業庁発行)に掲載されています。
なお、上記の事例において、譲渡額1億円、負債5千万円と金額を統一した場合の比較は以下のとおりです。料金体系によって、かなり差がでることがわかります。
事例1 | 事例2 | 事例3 | 事例4 | |
着手金 | 100×1.1=110 | - | 50×1.1=55 | - |
月額報酬 | - | - | 10×1.1×4=44 | - |
中間金 | - | 50×1.1=55 | - | - |
成功報酬算定式 | レーマン方式 | レーマン方式 | 一律4% | レーマン方式 |
最低手数料 | 550 | 1,100 | 330 | 1,100 |
基準となる価額 | 譲渡額 10,000 | 移動総資産額 15,000 | 譲渡額 10,000 | 譲渡額 10,000 |
成功報酬 | 10,000×5%×1.1=550 | 15,000×5%×1.1=825 | 10,000×4%×1.1=440 | 10,000×5%×1.1=550 |
手数料総額 | 110+550=660 | 825-55=770 | 55+44+440=539 | 1,100 |
【参考】中小企業庁 「M&A支援機関(FA・仲介)への報酬」集計結果(2022年度)
まとめ
2024年9月以降、中小企業庁「M&A支援機関登録制度」ウェブサイトにて、登録機関の料金体系が開示されて会社間比較ができるようになりました。だからといって、料金だけでM&A会社を選ぶのは危険です。資金の搾取、経営者保証未解除など、色々と問題も出てきています。経営者の方にとって、M&Aは未知の世界です。良い専門家・M&A支援者と出会えるかどうかが成功のカギになってくると思います。