
日本の中小企業は労働生産性が低いと言われます。今回は、企業の労働生産性を向上させる指標について解説します。
このブログは、2022年12月6日に初公開した記事に最新情報を加味して更新したものです。
日本の労働生産性は低い?
よく「日本の労働生産性は低い」と言われます。
実際、日本の時間当たり労働生産性は 56.8ドル(5,379円) にとどまります。
これはOECD加盟38カ国中 29位 という低い順位です。
また、一人当たり労働生産性(就業者一人あたりの付加価値)は 92,663ドル(約877万円)。
この数値もOECD加盟国中 32位 と下位に位置しています。
【参考】公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024」
個々の企業の労働生産性を単純に集計しても、国全体の生産性になるわけではありません。
しかし、企業ごとの労働生産性が高まらなければ、日本全体の労働生産性も上がることはありません。
つまり、一社一社の改善の積み重ねが、日本の生産性向上につながるのです。
以下では、企業の労働生産性の算定式について解説します。
そもそも生産性とは
生産性とは、投入高(INPUT)に対する算出高(OUTPUT)の割合のことです。
生産性=産出高(OUTPUT)/ 投入高(INPUT)
したがって、生産性を高めるには、少ない投入(INPUT)で、大きな成果(OUTPUT)を出す必要があります。
つまり、「効率よく成果を出す力」こそが、生産性の本質なのです。
企業が投入する経営資源には、ヒト、モノ、カネ、情報があります。
今回は、投入高が「ヒト」である労働生産性について解説します。
労働生産性とは
一般に、生産性は就業者1人あたり、または就業1時間あたりの成果で表されます。
この成果には、付加価値額、生産数量、売上高などが使われます。
労働生産性=付加価値額 / 就業者数(または就業者数×就業時間)
付加価値とは
付加価値とは、会社が新たに生み出した価値のことを指します。
この付加価値には、2つの算定方法があります。
1つ目は、加算法です。
これは、人件費など、会社が内部で新たに生み出した価値を集計する方法です。
2つ目は、控除法です。
こちらは、売上高から外部から購入した原材料や仕入などを差し引いて求めます。
また、減価償却費を差し引かない付加価値を「粗付加価値(グロス)」、
差し引いたものを「純付加価値(ネット)」と呼びます。
加算法(日銀方式)
以下の算式で付加価値を計算します。すべての科目を損益計算書から抜き出すことができます。製造業の場合、製造原価に人件費、賃借料、租税公課、減価償却費が計上されていますので、それらも抜き出して加算する必要があります。
付加価値額=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費
控除法(中小企業庁方式)
売上高から変動費に該当する部分を控除したものを付加価値額とする方法です。
加算法と控除法の比較
下記の事例(卸売会社で変動費は売上原価のみ、従業員数50人)で、加算法、控除法それぞれ計算します。

種山公認会計士事務所作成(無断転載・転用不可)
なお、どちらの指標をつかったとしても、単年度だけで見るのではなく、過去から現在の趨勢(トレンド)を比較したり、同業他社との比較で原因を分析することが重要です。
【参考】TKC「BAST要約版(502業種14分析項目)」
ローカルベンチマークの労働生産性は?
なお、ローカルベンチマークの財務指標でも「労働生産性」の項目があります。上記の事例に当てはめると、
労働生産性=営業利益/従業員数=121,000千円/50人=2,420千円/人
と加算法、控除法よりも小さな数字になります。計算方式としてより簡便なものを採用しているためです。ローカルベンチマークでは、同業種との比較ができますので、一度試算されることをお勧めします。
【参考】ブログ「ローカルベンチマークとは」
労働生産性を上げるには
算定式は、売上を軸として以下のように分解できます。
労働生産性=粗利益 / 就業者数
=(粗利益 / 売上高)×(売上高 / 就業者数)
=粗利益率 × 一人当たり売上高
したがって、労働生産性を改善するには、粗利率を高めていくか、一人当たり売上高を増加させる施策が必要です。これには、ITの活用、設備投資等が考えられます。
下記のサイトに、生産性を向上させた事例があります。
【参考】厚生労働省山形労働局「生産性向上の好事例」
まとめ
以上、企業における労働生産性の算定式について解説しました。日本は労働生産性が低いことが問題になっています。まずは自社の労働生産性を把握し、過去数値や同業他社と比較することによって、問題点を抽出し、課題を設定・解決していくことが重要と考えます。