公認会計士・税理士 種山 和男 のブログ

借入金の連帯保証は外れる?

最終更新日:2022年8月16日

会社で借入をする際、経営者が連帯保証人になることを「経営者保証」といいます。
今回は、この「経営者保証」を外すための必要条件についてざっくり解説します。

【この記事を読んで得られること】

  • 経営者保証とは何か?
  • 経営者保証ガイドラインとは?
  • 後継者は、会社借入金の連帯保証を引き継ぐべき?

そもそも経営者保証とは

経営者保証」とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となることをいいます。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が連帯保証人として、企業に代わって返済することを求められます。

【参考】ブログ「個人か、それとも法人か

経営者保証が付いている会社の割合は?

以下のグラフは、東京商工会議所のアンケート結果です。経営者保証が全く付いていない会社の割合は15%程度です。85%の会社は経営者保証が付いています。

経営者保証ガイドラインが創設された意味

経営者保証ですが、メリットとして、会社がお金を借り易くなります。しかし、デメリットとして、以下の点があげられます。

  • 思い切った事業展開の阻害
  • 経営が窮境に陥った場合に早期の事業再生を阻害
  • 後継者への経営者交代時の障害  など

世論では、上記のデメリットが中小企業の活力を阻害しているとの批判がありました。そこで、経営者保証をせずに融資を受けることを可能とするための自主的なルールとして、「経営者保証ガイドライン」が2014年2月1日より施行されました。

経営者保証なしで融資を受けられる?

以下の3つ要件を満たせば、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。また、すでに設定されている経営者保証を解除してもらえる可能性もあります。

  1. 資産の所有やお金のやり取りに関して、法人と経営者の関係を明確に分ける
  2. 法人のみの資産や収益力で返済が可能となるように、財務基盤を強化する。
  3. 金融機関に対する財務情報の適時適切な開示

ただし、経営者保証を解除するかどうかは、金融機関の判断に委ねられています。したがって、上記の要件を満たしさえすれば、当然解除されるわけではありません

経営者保証ガイドラインの認知度は?

認知度について、東京商工会議所がアンケートを実施しました(2021年9月中旬)。アンケート時点では、経営者保証ガイドライン施行日より7年ほど経過しています。しかし、約4割弱の経営者が経営者保証ガイドラインを知りません。また、名称のみ知っているという経営者が約3割です。さらに、民間金融機関から積極的に説明している割合は約3割です。
したがって、経営者が積極的に情報を取りにいかないと、経営者保証は解除してもらえません。なお、融資の際に、「経営者保証ガイドラインの説明を受けた」という確認書を出さないと融資を受けられないケースもあるようです。これは理解した上で、借り易さを優先したと思われます。

次に、事業承継時における経営者保証です。

経営者保証は、事業承継時における障害・課題

上記アンケート結果によれば、9割近い会社に経営者保証がついています。下記のグラフでもわかるように、経営者保証は後継者の有無に関係なく、事業承継時の障害・課題になっています。

事業承継時には経営者保証ガイドラインの特則がある

経営者保証ガイドラインですが、事業承継時に焦点を当てた特則があります。2020年4月から運用が開始されました。特則により、「前経営者、後継者双方から経営者保証の二重徴求は原則禁止」されています。また、後継者の経営者保証は事業承継の阻害要因にならないように、慎重に判断することが要請されています。

出典:東京商工会議所「事業承継の取り組みと課題に関する実態アンケート報告書」2021年2月26日
※二重徴求:前経営者の個人保証を解除せずに、新経営者も追加で保証人とし、二重に保証を取ること。

事業承継時の公的な支援制度

各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに「経営者保証コーディネーター」が設置されています。経営者保証コーディネーターは、地元金融機関OBが多いようです。以下のような公的支援制度※1があります。

  • 経営者保証コーディネーターによる確認後、3年以内の事業承継を条件として、既存プロパー借入金(個人保証あり)を信用保証協会付の借入金(10年以内)に借り換えが可能※2
  • 経営者保証コーディネーターによる確認後、信用保証料の軽減を受けることが可能。
  • 専門家派遣制度あり(金融機関との間に入って交渉するのではなく、あくまでも目線合わせです)

※1:詳細は会社所在地近くの事業承継・引継ぎ支援センターに確認してください。
※2:必ず借り換えができるというわけではなく、別途、金融機関と信用保証協会の審査があります。

「経営者保証ガイドライン」の活用実績は?

以下のグラフは、金融庁から公表された経営者保証ガイドライン活用実績の推移です。二重徴求(前経営者の個人保証を解除せずに、新経営者も追加で保証人とし、二重に保証を取ること)は、徐々に減少傾向にありますが、直近で約4%あります。なお、経営者保証なしの割合は10%前後で推移しています。

まとめ

さて、今回は「経営者保証ガイドライン」について解説しました。この制度は、経営者が積極的に情報を取りにいかないと、恩恵がない制度です。事業承継時に解除できるように、専門家と連携して財務体質を強化するのが何よりも近道です。

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