最終更新日:2022年9月2日
今回は、役員や従業員の福利厚生として、会社の社宅を利用した節税手法について解説します。
【この記事を読んで得られること】
- 社宅を使った節税手法の注意点は?
- 役員・従業員に社宅・寮を貸した場合の家賃は?
- 個人で所有している不動産を社宅で活用する場合は?
会社の社宅とは
社宅とは、会社が役員や従業員に対して比較的安価で貸与する住宅のことです。
会社で社宅を所有する主な目的は福利厚生と転勤対応です。
従業員にとっても、相場よりも比較的安価に借りることができ、また社員どうしの繋がりもできますので安心です。したがって、多くの求人情報に社宅や寮の有無が記載されています。
社宅を経費にして節税の意味
会社名義で社宅を購入した場合、あるいは社宅を借り上げている場合、以下の経費が計上できます。
- 会社で減価償却費を計上する(購入の場合のみ)。
- 借入金で購入した場合、支払利息を会社の経費にできる(購入の場合のみ)。
- 固定資産税を会社の経費にできる(購入の場合のみ)。
- 支払家賃を会社の経費にできる(借り上げの場合のみ)。
- 水道光熱費なども会社経費にできる。
ただし、社宅に住んでいる役員や従業員は、会社に家賃を支払う必要があります。無償(ただ)で住んでいると、税務調査時に給与課税されてしまいます。
したがって、上記の経費と役員・従業員から支払われた家賃との差額相当分が会社の実質的な費用となります。
それでは、役員・従業員の家賃はどのように決めたらよいでしょうか。
役員・従業員に社宅・寮を貸した場合
会社から役員・従業員への賃貸料が低すぎる場合、税務調査の際に給与課税リスクがあります。給与課税とは、給与額が増加して、その分、税金も増えることをいいます。したがって、会社にとっても従業員にとっても良いことはありません。
そこで、税務上、給与として課税されない家賃の計算方法が定められています。
社宅の所有者は会社です。役員・従業員は会社に家賃を支払う義務があります。税務上、会社は、1か月あたり一定額の家賃(以下、「賃貸料相当額」)を役員・従業員から受け取っていれば、給与課税されません。税務上、給与課税されない賃貸料相当額は、下記1.~3.の合計となります。
- 〔その年度の建物の固定資産税の課税標準額〕×0.2%
- 12円×〔その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル)〕
- 〔その年度の敷地の固定資産税の課税標準額〕×0.22%
上記の算式で計算してみると、実際の相場よりも相当低い金額になります。このため、役員・従業員にとって福利厚生の意味合いがでてきます。
役員は「小規模」か否かで算式が異なる
ただし、役員の場合、上記の算式は「小規模な住宅」に該当する場合のみです。「小規模な住宅」か否かは、以下の要件で判断します。
- 法定耐用年数が30年以下の建物⇒床面積が132平方メートル以下である住宅
- 法定耐用年数が30年超の建物 ⇒床面積が99平方メートル以下である住宅
なお、区分所有の建物(マンションなど)は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積を加えて判定します。
小規模な住宅に該当しない場合
役員に貸与する社宅が小規模住宅に該当しない場合、その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なります。
(1)自社所有の社宅の場合
次の1.と2.の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
- 〔その年度の建物の固定資産税の課税標準額〕×12%※
- 〔その年度の敷地の固定資産税の課税標準額〕×6%
※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく10%です。
(2)他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
役員の場合、豪華社宅では上記の算式が適用できない
役員社宅で、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅の場合は、上記の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
豪華社宅であるかどうかの判定は、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
給与課税されるケース
以下のそれぞれのケースで、給与課税される金額が異なります。
(1)役員・従業員に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2)役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
不動産を個人で所有している場合
以上は、不動産を会社で所有し(借り上げて)、役員・従業員に社宅として貸し付けているケースでした。個人で不動産を所有している場合、自分や親族へ社宅として貸し付けるという概念自体がありません。単なる不動産の賃貸です。したがって、所有不動産の経費(減価償却費、固定資産税など)は、自分が個人事業主であれば家事按分経費として計上するか、他者へ貸し付けているのであれば、不動産所得の経費として計上することになります。
不動産を会社に移転させる場合
個人で所有している不動産を法人に移転させる場合、不動産所得税や登記関係費用などの不動産移転コストがかかります。また、相続財産も不動産から自社株式へ変更されます。場合によっては、会社の資金繰りを圧迫します。したがって、こういったことを踏まえたシミュレーションが必須であり、今後数十年先を見越して意思決定する必要があります。
【参考】国税庁タックスアンサー「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
まとめ
さて今回は、社宅制度を使用した節税対策について解説しました。給与課税されるリスクを回避するためにも、事前に専門家(顧問税理士)へ相談したほうが無難です。
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