公認会計士・税理士 種山 和男 のブログ

事業承継税制と資産管理会社

最終更新日:2023年5月2日
代表 種山
代表 種山

事業承継税制は、事業活動を支援する目的で創設され、雇用を伴わない資産管理会社は対象外です。認定の取り消しに注意が必要です。

【この記事を読んで得られること】

  • 事業承継税制における資産管理会社とは?
  • 特定資産とは?
  • 資産管理会社に該当したらどうなる?

事業承継税制における資産管理会社には2種類ある

事業承継税制における資産管理会社とは、以下の要件を満たす会社のことです。資産管理会社に該当すると、認定が取り消され、2か月以内に猶予税額と利子税額を合わせて納税する必要があります。

  • 特定資産の保有割合総資産の総額の70%以上の会社【資産保有型会社
  • 特定資産からの運用収入総収入金額の75%以上の会社【資産運用型会社

特定資産:有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金など

なぜ、資産管理会社に該当すると事業承継税制が取り消されるのか

事業承継税制は、後継者が自社株式を相続した際にかかる相続税の負担が軽減されます。その結果、企業の資金繰りが悪化しにくくなり、雇用の安定が図られます。しかし、事業承継税制は、実際に事業活動を行っている企業に限定されています。そのため、資産管理のみを目的としている資産管理会社は対象外となります。

資産保有型会社とは

資産保有型会社に該当するか否かは、以下の算式で判断します。

出典:中小企業庁「経営承継円滑化法申請マニュアル

※分子・分母についての注意点は、以下のとおりです。
1.貸借対照表に計上されている帳簿価額(簿価)を用いる。
2.減価償却資産等については、減価償却累計額等を控除した後の帳簿価額を用いる。つまり、直接減額⽅式にあわせて計算します。
3.貸倒引当⾦等の評価性引当⾦については、資産の帳簿価額の総額・特定資産の帳簿価額の合計額から控除しません。つまり、資産の帳簿価額の総額に加算します。

なお、資産保有型会社の要件を満たしても、事業実態があれば、資産保有型会社には該当しないとみなされる特例があります。

特定資産とは

特定資産とは、有価証券自ら使用していない不動産現金・預金等のことです。

有価証券等

有価証券等とは、国債証券、地方債証券、株券などの金融商品取引法に規定する有価証券と他の持分会社の持分のことです。なお、持分会社には、合同会社、合名会社、合資会社があります。

特別子会社株式※は、原則として有価証券等から除かれます。しかしながら、特別子会社が資産管理会社に該当する場合は、有価証券等(特定資産)に含まれます。

特別子会社が資産管理会社に該当するか否かは、以下の算式により判定します。

※特別特定資産とは、特別⼦会社が保有する特定資産のこと

なお、当該特別⼦会社に特別⼦会社(孫会社)がある場合、孫会社の株式⼜は持分は、その資産状況や収⼊状況を問わず、すべて「特別特定資産」から除外されます。

※特別子会社

特別子会社とは、会社その代表者と当該代表者の同族関係者が合わせて総株主等議決権数の過半数を有している会社(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)及び外国会社のことです。
なお、会社法上の⼦会社の定義とは異なる点は注意が必要です。
【参考】ブログ「会社支配に議決権はどの程度必要か?

※特定特別子会社

特定特別⼦会社とは、「会社」と「その代表者」と「当該代表者と⽣計を⼀にする親族」が合わせて総株主等議決権数の過半数を有している会社のことです。特別子会社に対して、同族関係者の範囲が狭くなっています

現に⾃ら使⽤していない不動産

会社⾃らの事務所や⼯場として使⽤している不動産以外のものすべてが該当します。例として、以下のものが該当します。

  • 遊休不動産(遊休地に太陽光発電設備を設置しているもの等を含む)
  • 販売⽤として保有する不動産(仕掛中の未成⼯事⽀出⾦等を含む。ただし、他者からの請負⼯事に係る未成⼯事⽀出⾦は含みません)
  • 第三者に賃貸している不動産や駐⾞場(コインパーキングを含む)
    役員⽤住宅も特定資産に含まれます。なお、従業員⽤社宅は「⾃⼰使⽤」として含まれません。
  • ⼀棟の建物のうちに現に⾃ら使⽤する部分とそれ以外の部分とがある場合
    ⼀棟の建物の価額を、床⾯積割合等により按分した価額をもって、それぞれの部分の価額を認識します。

なお、不動産賃貸業を主たる事業とする会社が形式上資産保有型会社に該当する場合があり得ます。しかし、事業実態があれば、資産保有型会社に該当しない特例があります。

※不動産の定義

⼟地(⼟地の上に存する権利を含む)
建物及びその附属設備(当該建物と⼀体として利⽤されるもの限定)
構築物(建物と同⼀視しうるもの限定)
なお、船舶や航空機は不動産に該当しません。

※事業用資産等

不動産や動産は中小企業者の事業に不可欠な資産であり、第三者からの貸付金や未収金も事業実施に重要です。これらを「事業用資産等」と定義しています。

ゴルフ会員権等

ゴルフ会員権、スポーツクラブ会員権、リゾート会員権などです。
ただし、ゴルフ会員権等の販売業者が販売⽬的で所有しているものは、特定資産から除外されます。なお、接待⽤で所有しているものについては、営業先の開拓のためであっても特定資産に該当します。
※販売用不動産が特定資産に該当するのに対して、販売用ゴルフ会員権は特定資産に該当しません。

絵画、貴⾦属等

絵画、彫刻、⼯芸品、陶磁器、⾻董品などの⽂化的動産、
⾦、銀などの貴⾦属、ダイヤモンドなどの宝⽯です。
ただし、これらの資産の販売業者(画廊、⾻董品店、宝⽯店等)が販売⽬的で所有しているものは、除外されます。
※販売用不動産が特定資産に該当するのに対して、販売用絵画等は特定資産に該当しません。

現預⾦など

申請会社の貸借対照表に計上されている以下の資産は、特定資産に該当します。

  • 現⾦や預貯⾦その他これらに類する資産
  • 現⾦や預貯⾦と同視し得る保険積⽴⾦など
  • 申請会社の代表者やその同族関係者に対する貸付⾦や未収⾦、預け⾦や差⼊保証⾦など

なお、上記同族関係者の範囲には「同族関係にある外国会社」が含まれます。

※同族関係にある外国会社

代表者、代表者の親族、代表者と事実上婚姻関係にある者など特別の関係がある者等に、総株主議決権数の過半数を保有される外国会社のこと。

配当、損⾦不算⼊役員給与とは

申請会社の代表者やその同族関係者に支払われた剰余金の配当や過大役員給与は、資産保有型会社の判定の際に加算します。
この給与とは、当該申請会社の役員⼜は使⽤⼈として受ける給与であり、通常の現⾦による給与の他に、例えば債務免除債務引受渡切交際費などによる経済的利益のうち、実質的に給与の⽀給を受けたのと同様の経済的効果をもたらすと考えられるものも含まれます。
従って、明らかに株主等としての地位に基づき受ける配当等や優待、⾹典や⾒舞⾦等でその受給者の社会的地位等に照らし社会通念上相当と認められるものは含まれません。
なお、加算の対象期間は、判定の⽇以前の5年間です。贈与税の納税猶予制度の適⽤に係る贈与の⽇⼜は相続税の納税猶予制度の適⽤に係る相続開始の⽇前の期間において⽀払われたものは含まれません。

資産運用型会社とは

以下の算式により、各事業年度終了時点において資産運用型会社か否か判定します。

出典:中小企業庁「経営承継円滑化法申請マニュアル

総収入額は売上高営業外収益特別利益の合計です。また、特定資産の運用収入には配当金や受取利息、家賃などが含まれます。なお、特定資産の運用収入割合が75%以上でも、事業実態があれば、資産運用型会社には該当しない特例があります。

資産管理会社に該当しないための事業実態要件とは

贈与の時⼜は相続の開始の時において、
当該申請会社が「資産管理会社」、その特別子会社が「資産管理子会社」の基準に該当する場合であっても、以下の1.から3.のいずれにも該当するときは、「資産管理会社」、「資産管理子会社」に該当しないとみなされる特例があります。

  1. 常時使⽤する従業員の数が5⼈以上であること
    ※ただし、「従業員」には、後継者と⽣計を⼀にする親族は含めることができません
  2. 事務所、店舗、⼯場その他これらに類するものを所有し、⼜は賃借していること。
  3. 贈与の⽇(相続の開始の⽇)まで、引き続き3年以上にわたり次に掲げるいずれかの業務をしていること。
    (イ)商品販売
    (商品の販売、資産の貸付け⼜は役務の提供で、継続して対価を得て⾏われるもの。その商品の開発若しくは⽣産⼜は役務の開発を含む。)
    ※ただし、資産の貸付けの相⼿⽅が「後継者」や、「その同族関係者」の場合には、当該資産の貸付けは商品販売等の事業活動に該当しません

    (ロ)商品販売等を⾏うために必要となる資産(上記②の事務所等を除く)の所有⼜は賃貸

    (ハ)上記(イ)及び(ロ)の業務に類するもの

なお、設⽴後3年未満の新設会社の場合、要件を充⾜することはできませんので、注意が必要です。

もし資産管理会社に該当したら?

従前は、資産管理会社に該当した場合、即認定の取り消しでした。
したがって、認定が取り消された場合、猶予税額と利子税を2か月以内に納付しなければなりませんでした。

【参考】ブログ「これだけは知っておきたい「事業承継税制」

しかし、2019年度税制改正により、事業活動による偶発的事由で要件を満たせない場合、一定期間は資産運用型会社や資産保有型会社に該当しないとされました。
資産保有型会社では、特定資産割合が70%以上となる、やむを得ない事由が生じた日から6ヶ月間は該当しないものとみなされます。
また、資産運用型会社では、特定資産の運用収入割合が75%以上となる、やむを得ない事由が生じた事業年度から次の事業年度の6ヶ月経過する日までは該当しないとみなされます。

ただし、事業実態要件にて、資産管理会社に該当しないとみなされていた場合、一定期間にわたって、猶予される特例はありません。したがって、事業実態要件が満たせなくなった場合は、即認定取り消しとなる点は注意が必要です。

まとめ

今回は、事業承継税制における資産管理会社について解説しました。事業承継税制の適用にあたって、雇用維持要件とともに適用を躊躇する判断要件です。
創業100年の老舗企業を見ると、ビジネスモデルの変換ができずに、貸ビル業に業態転換している企業も多く見られます。したがって、このような点も考慮して、事業承継税制を採用するか否か、検討すべきと思います。

代表 種山
代表 種山

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