このコラムでは、後継者決定後の実態を解説します。後継者が決まっていても、事業承継の準備が終わっているとは限りません。日商2026年調査によると、対象は60歳以上で後継者候補がいる企業です。そのうち71.8%が、事業承継計画を作成していません。
後継者ありでも計画未作成
今回の調査では、代表者が60歳以上で後継者候補がいる企業のうち、71.8%が事業承継計画を作成していないと回答しています。後継者が決まっていれば安心、というわけではないことが、調査結果からもうかがえます。
株価評価とは別の課題
同じ対象企業の70.5%は、自社株を一度は評価した経験があると回答しています。ただし、この二つの数値は同じ企業を追跡したものではなく、両方に該当する企業の割合を示すものではありません。株価などの個別情報を確認することと、承継全体の計画を作成することは、別の作業であることがうかがえます。
よくあるパターン
たとえば、後継者となる子どもが数年前から会社に入り、社内でも後継者として認識されている、というケースは少なくありません。
しかし、株式をいつ、どの方法で移すか、社長交代の時期をいつにするか、個人保証をどう引き継ぐかは、まだ何も決まっていない、ということがあります。
このような場合、後継者本人も「いずれ引き継ぐとは分かっているが、何から確認すればよいか分からない」と感じていることが少なくありません。
なぜ計画が後回しになりやすいのか
後継者が決まった後、計画作成が進まない背景には、いくつかの共通した傾向があります。
まず、後継者が決まったことで「一番大きな問題は片付いた」と感じ、株式移転や資金、経営権といった個別の論点への着手が先送りされやすい傾向があります。
また、税務・財務・金融機関対応など、関わる専門家がそれぞれ異なるため、全体を俯瞰して「次に何を、どの順番で進めるか」を示す立場の人がいないまま進んでしまうケースも見られます。
そのため、後継者が決まっている場合も、確認の順番を整理し直す必要があります。
準備には年単位の時間がかかる
後継者と認識してから就任までの期間は、「5年以上」の企業が47.9%でした。うち「10年以上」も28.3%を占めています。一方、事業承継が円滑に進まなかった企業の約4割は、1年未満で承継しています。この層では、「準備期間の不足」が最も多い課題として挙げられました。
課題は株式移転と後継者教育
親族内に後継者候補がいる企業に、事業承継時の課題を聞いた結果です。「後継者への株式移転」(42.3%)が最多でした。次いで「後継者教育」(41.1%)が挙げられています。また、後継者を決めた後も、株式・資金・経営権・個人保証など、確認すべき論点が残ることがわかります。

まとめ
後継者が決まっていることと、事業承継の準備が終わっていることは別です。
今回の調査では、後継者候補がいる企業でも7割超が計画未作成でした。
自社株評価を済ませていても、承継全体の方針が決まっているとは限りません。
後継者が決まっている場合も、次のような順番で確認しておく必要があります。
- 現在の株主構成と自社株の評価額を確認する
- 株式の移転方法(贈与・売買など)と、必要な税負担・資金を比較する
- 個人保証や借入金の引き継ぎ方法を確認する
- 社長交代の時期と、後継者への権限移譲の進め方を確認する
- 家族・株主・金融機関への説明方法を整理する
自社が今どの段階にあるか確認する
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