このコラムでは、経営計画を「作った後」に何が成果を左右するのかを、東京商工リサーチの最新調査データをもとに解説します。
経営計画は「作って終わり」ではない
経営計画を作成しても、そのとおりに経営が進むとは限りません。
売上が想定を下回ることもあります。人材採用や設備投資が予定どおり進まないこともあります。資金繰りや金融機関との関係など、想定していなかった問題が生じることもあります。
重要なのは、計画を作ることより、その後に何を実行し、どのように見直していくかです。
東京商工リサーチが2026年8月に公表した2026年「経営計画の策定と実行に関するアンケート」調査からも、この点が見えてきます。
経営計画を作った企業は6割を超える
調査によると、過去に経営計画を策定したことがある企業は62.1%でした。
ここでいう経営計画とは、向こう3年以上を対象とした業績・数値目標と、その達成に向けた具体的なアクションプランを含むものです。
この結果より、経営計画そのものは、決して一部の企業だけが作るものではなくなっています。
一方、5年以内に経営計画を策定した企業のうち、外部支援を受けていた企業は21.4%でした。ここでいう外部支援とは、金融機関や専門家からの助言などを指します。中小企業に限っても22.1%です。
つまり、多くの企業は自社だけで経営計画を策定していますが、問題は、その後です。
計画策定後に「実行できるか」が難しい
外部支援を受けて経営計画を策定した企業に、アクションプランの実行状況を聞いたところ、「半分以上実行した」企業は55.1%でした。
逆にいえば、計画を作っても、予定した施策の半分まで実行できていない企業も少なくないということです。
経営計画では、次のような目標を掲げることができます。
- 新規顧客を増やす
- 採用を進める
- 設備投資を行う
- 借入金を減らす
- 利益率を改善する
しかし実際の経営では、「誰が、いつまでに、何をするのか」を決め、途中で発生した問題に対応しながら実行していく必要があります。つまり、計画書を作ることと、計画を実行することは別の仕事なのです。
実行支援を受けた企業の81%がプラス評価
今回の調査で特に興味深いのは、経営計画を作った後の支援に関する結果です。
計画策定後に外部支援者から実行支援を受けた企業412社に、その効果を聞いたところ、次の結果でした。
- アクションプランの実行に「プラスだった」……81.0%(333社:筆者追記)
- 数値目標の達成に「プラスだった」……71.1%(292社:筆者追記)
ここでいう実行支援には、進捗確認、課題整理、計画の見直し、取引先・人材・専門家の紹介などが含まれています。
この調査だけで、「外部専門家に依頼すれば業績が良くなる」とまでは言えません。
ただし、実際に実行支援を受けた企業の多くが、その支援をプラスに評価していることは注目すべき結果です。
計画の作成より継続的な確認が必要
経営計画を実際の経営に生かすためには、少なくとも次の流れが必要です。
現状を確認する→目標を決める→具体的な行動を決める→実行する→数字と進捗を確認する→必要に応じて計画を変更する。
経営環境が変われば、当初の計画を修正することも必要です。「計画どおりに進んでいないから失敗」ではありません。
計画と実績の差を確認し、なぜ差が出ているのか、何を変更すべきなのか、このまま進めて問題ないのかを考えることに、経営計画を作る意味があります。
なお、数字の見方については、以下のコラムでも解説しています。
社長一人では確認しにくいこともある
中小企業では、計画を作る人、実行する人、判断する人が同じであることも珍しくありません。
多くの場合、それは社長です。
その場合、次のような判断も、社長自身が行うことになります。
- 売上目標を下げるべきか
- 予定していた設備投資を実行するか
- 追加で借入をするか
- 人を採用するか
- 事業承継に向けて投資を抑えるべきか
自分で作った計画を、自分一人で客観的に評価するのは簡単ではありません。
そのため外部専門家には、計画書を作成することだけではなく、数字と実際の経営状況を見ながら、社長が次の判断をするための材料を提供する役割があります。
経営計画は「完成品」ではありません
経営計画は、一度作れば完成する書類ではありません。
特に事業承継、設備投資、借入、組織変更など大きな経営判断を伴う会社では、数年先まで最初の想定どおりに進むことの方が難しいです。
だからこそ、計画を作る→実行する→結果を確認する→次の判断をする、という繰り返しが重要になります。
次のような状態になっていないか
経営計画を作成していても、次のような状態になっていないでしょうか。
- 計画と実績の差を十分に確認していない
- 資金繰りまで連動して見ていない
- 設備投資や借入の判断を社長一人で行っている
- 数年前に作った計画がそのままになっている
このような場合は、計画を作り直す前に確認から始めるのも一つの方法です。
確認すべきは、現在の数字と今後の重要な判断です。
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