事業承継税制、「猶予税額の免除」も検討へ~令和9年度改正に向けた見直しの方向性~

このコラムでは、事業承継税制の見直し動向を整理します。事業承継税制(特例措置)は、2027年12月末に適用期限を迎えます。今回取り上げるのは、令和8年8月5日に公表された検討会報告書(案)です。

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令和8年8月5日、中小企業庁の検討会が報告書(案)を公表しました。名称は「第6回 中小企業の親族内承継に関する検討会」です。座長は柳川範之・東京大学大学院教授が務めています。

この報告書は、事業承継税制(特例措置)の適用期限到来後、制度をどう設計し直すかの方向性を示すものです。つまり、令和9年度税制改正における結論に向けた土台になります。

現行制度は、平成21年度創設の一般措置を基礎としています。猶予対象株式数は総株式数の最大2/3まで、猶予割合は贈与税100%・相続税80%です。

そこから、平成30年度に特例措置が導入されました。株式数の上限撤廃、相続税猶予割合100%への引き上げなど、要件が大幅に緩和されています。

なお、特例承継計画の提出期限は、令和8年度税制改正で令和9年9月末まで再延長されました。ただし、特例措置自体の適用期限延長は行われていません。

現行制度は、納税を将来にわたり猶予する方式です。そのため、将来の確定事由発生時の納税負担への懸念が残ります。

一方、長期にわたる納税猶予が、設備投資や賃上げなどの経営判断に影響を与える可能性も指摘されています。事業承継税制活用企業へのアンケートでは、「設備投資の増加」を挙げた企業は3.7%、「従業員の賃上げの実現」を挙げた企業は5.2%にとどまりました。

これを踏まえ、報告書(案)では、成長投資や賃上げ、地域貢献等を実施する中小企業について、猶予税額の免除等を検討してはどうか、との方向性が示されました。免除の要件や範囲は、現時点で決まったものではありません。

猶予対象株式数や猶予割合については、企業ごとの実情に応じた柔軟な承継を可能にしつつ、早期の贈与による事業承継を促す観点から、その在り方が検討されています。一般措置の2/3という上限を再び設けることは、必ずしも妥当ではないとの意見も出ています(この上限が、かつて一般措置の活用が進まなかった一因であったことも報告書は指摘しています)。ただし、この論点は直近2回の検討会では取り上げられておらず、今後さらに議論が深まる見込みです。

雇用確保要件は、特例措置では事業承継後5年間の平均で雇用の8割を維持することが基準です。ただし、8割を下回った場合でも、経営状況の悪化など一定の事情があれば、納税猶予を継続できる仕組みになっています。実際、税制活用企業の約96%がこの要件を達成しています。

一方で、人口減少下での実効性も課題として挙げられています。そのため、賃金など雇用人数以外の指標を組み合わせる可能性が示されました。参考事例として、ドイツの事業承継税制における人件費維持要件が挙げられています。

このほか、検討課題は複数あります。海外子会社株式の対象化、非上場企業への一定の情報開示要請、年次報告・添付書類の見直しによる手続負担の軽減などです。

本報告書は、あくまで「案」です。具体的な猶予割合や免除の要件、施行時期は、今後の税制改正プロセスで確定します。

そのため、特例承継計画を令和9年9月末までに提出して現行の特例措置の活用を目指すか、今後の制度改正を踏まえて承継方法を検討するかの判断は、一律には決まりません。株主構成や事業承継の進捗状況によって異なるためです。

なお、国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」における議論にも注意が必要です。この議論は、株式評価額を通じて猶予・免除の対象金額に影響し得ます。両者の動向を、併せて注視する必要があります。

自社の場合、特例承継計画を提出して現行制度の活用を目指すべきか——

株主構成や進捗状況によって判断が異なります。

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この記事を書いた人

種山公認会計士・税理士事務所/代表
TMC株式会社/代表取締役
公認会計士・税理士・中小企業診断士

大手監査法人、大手証券会社、税理士法人、経営コンサルティング会社での実務を経て、2011年に独立。25年以上にわたり、税務・会計・財務・経営に携わる。

事業承継の相談・対策支援 累計100社超。東京都中小企業振興公社の経営相談員として、相談対応延べ1,535件(2012〜2025年度)。

現在は、事業承継・M&A、財務、組織再編・資本政策、後継者・幹部伴走を中心に、オーナー社長の意思決定を支援。

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