M&A仲介・FAの手数料とレーマン方式

このコラムでは、中小企業の経営者が、M&A専門業者に依頼した場合の手数料について解説します。

「成功報酬はレーマン方式で5%です」

M&A専門業者からこのように説明されることがあります。

しかし、「5%」という数字だけでは、実際にいくら支払うのかはわかりません。

なぜなら、M&Aの手数料は、何に5%を掛けるのか、最低手数料はいくらか、着手金や中間金があるかによって変わるためです。

目次

「5%」だけではわからない理由

具体的には、次の3点が影響します。

1.何を基準に計算するか

成功報酬は、譲渡額(譲受額)、移動総資産額(譲渡額+負債)、純資産額など、いずれかの「基準となる価額」に料率を掛けて計算します。ただし、基準額はM&A専門業者によって異なり、同じ譲渡額でも採用する基準によって金額が変わります。移動総資産額を基準にする場合、負債が大きいほど基準額が大きくなるため、譲渡額基準より手数料が高くなる傾向があります。

2.最低手数料はいくらか

譲渡額が小さい場合、レーマン方式の計算額だけでは十分な報酬を確保できないことがあります。そのため、M&A専門業者の多くは最低手数料を設定しています。したがって、計算額が最低手数料を下回る場合、実際の手数料は最低手数料の金額になります。

3.他にどのような報酬があるか

成功報酬のほか、相談料・着手金・月額報酬・タイムチャージ・中間金が発生する場合があります。ただし、すべてが発生するわけではなく、着手金なし・成功報酬のみとする料金体系も増えています。また、中間金は、成功報酬に充当される場合とされない場合があるため、確認が必要です。

以上のとおり、M&A仲介手数料には法規制がなく、料金体系はM&A専門業者ごとに独自に設定されています。

したがって、これら3点を契約前に確認したうえで、総額で比較することが重要です。

レーマン方式とは

「基準となる価額」を階層ごとに区切り、各階層に応じた料率を掛けた金額を合算して算定する手法です。なお、以下のあくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FAにより異なります。

表:レーマン方式の一例

スクロールできます
基準となる価額(円)乗じる割合(%)
5億円以下の部分5
5億円超10億円以下の部分4
10億円超50億円以下の部分3
50億円超100億円以下の部分2
100億円超の部分1
出典:「中小M&Aガイドライン(第3版)」中小企業庁

具体的には、基準となる価額が8億円の場合、8億円全体に4%や5%を掛けるのではなく、

  • 最初の5億円 × 5% = 2,500万円
  • 残りの3億円 × 4% = 1,200万円

を合算し、成功報酬は合計3,700万円(税抜)となります。

実際にはどのくらい支払われているか

M&A支援機関登録制度が公表している実績データでは、株式譲渡額の区分ごとに、譲渡額に対する報酬総額(着手金・中間金・成功報酬等の合計)の割合の中央値が示されています。

表:株式譲渡額区分別の報酬率(2022年~22024年度合計)

スクロールできます
株式譲渡額サンプル数中央値
500万円以上〜1千万円以下278件50.0%
1千万円超〜2千万円以下313件29.7%
2千万円超〜3千万円以下288件28.7%
3千万円超〜4千万円以下194件20.4%
4千万円超〜5千万円以下203件20.0%
5千万円超〜1億円以下617件14.8%
1億円超〜1億5千万円以下407件11.5%
1億5千万円超〜2億円以下281件10.0%
2億円超〜3億円以下409件8.0%
3億円超〜5億円以下388件6.0%
5億円超790件4.3%
4,168件
出典:中小企業庁 「M&A支援機関(FA・仲介)への報酬」集計結果

※報酬率=着手金・中間金・成功報酬等の報酬総額/株式譲渡額

したがって、レーマン方式の料率そのものではありません。

また、案件によるばらつきがあるため、参考値としてご覧ください。

見積書で確認する4項目

M&A専門業者から料金表や提案書を受け取った場合は、少なくとも次の4点を確認してください。

  1. 成功報酬の基準となる金額は何か
  2. 最低手数料はいくらか
  3. 着手金・中間金等を含めた手数料総額はいくらになるか
  4. その報酬に、どこまでの業務が含まれるか

特に4番目が重要です。なぜなら、相手先の探索、条件交渉、資料作成、最終契約までの進行など、含まれる業務範囲が異なれば、手数料だけを比較しても意味がないためです。

まとめ|「成功報酬5%」だけでは比較できない

M&A専門業者から「5%」と説明された場合も、その数字だけで高い・安いを判断することはできません。

むしろ、自社の場合の手数料総額と、何をしてもらえるのかを確認することが重要です。

さらに、仲介者は譲渡側・譲受側の双方と契約するのに対し、FAは原則としてどちらか一方と契約します。

そのため、誰の立場で助言するのかも、あわせて確認してください。

また、M&Aを選ぶかどうかは、料金とは別の判断です。したがって、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)を比較したうえで、承継方法を決める必要があります。

親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)を比較し、会社の状況に応じて判断に必要な論点を確認します。
なお、M&Aを前提とせず、進める場合は売主側の立場から条件を確認します。

代表が直接対応|秘密厳守|オンライン可

この記事を書いた人

種山公認会計士・税理士事務所/代表
TMC株式会社/代表取締役
公認会計士・税理士・中小企業診断士

大手監査法人、大手証券会社、税理士法人、経営コンサルティング会社での実務を経て、2011年に独立。25年以上にわたり、税務・会計・財務・経営に携わる。

事業承継の相談・対策支援 累計100社超。東京都中小企業振興公社の経営相談員として、相談対応延べ1,535件(2012〜2025年度)。

現在は、事業承継・M&A、財務、組織再編・資本政策、後継者・幹部伴走を中心に、オーナー社長の意思決定を支援。

目次