改正「中小企業の会計に関する指針」が「中小企業の会計に関する指針作成検討委員会※」より公表されました。
※「中小企業の会計に関する指針作成検討委員会」とは、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の関係4団体が主体となって設置された委員会です。
今回の改正における改正点
(1) 改正内容
「個別注記表」の第85項に収益の計上基準の注記に含める具体的な事項を追加するとともに、「個別注記表の例示」及び「別紙 収益の計上基準の注記例」において「収益の計上基準」の記載例を追加しています。
(2) 改正の理由
収益に関して、上場企業等においては企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)が適用される一方、上場企業等以外においては、引き続き企業会計原則に基づく実現主義によることができます。
この結果、上場企業等以外には代替的な会計基準が存在することになったため、会社計算規則上、採用している「収益の計上基準」を記載することが必要であると解釈できます(企業会計原則注解1-2、会社計算規則第3条、第101条第1項第4号)。
そのため、今般の改正では、中小企業が上記の注記を行う際の便宜を考慮して、「重要な会計方針」の注記の「収益の計上基準」の定めを改正することといたしました。
(3) その他
なお、平成31年(2019年)及び令和3年(2021年)の改正時のプレスリリースに記載したとおり、収益認識会計基準の考え方を中小会計指針に取り入れるかどうかは、収益認識会計基準が上場企業等に適用された後に、その適用状況及び中小企業における収益認識の実態も踏まえ、検討することを考えております。
【別紙】収益の計上基準の注記例
下記は例示であり、会社の状況や収益の計上基準に応じて適宜修正する必要がある。また、複数の事業を営む場合には、主要な事業について、それぞれ計上基準を記載することになる。
1. 汎用品の製造及び販売の場合
当社は、主に・・・に関する製造及び販売を行っており、出荷時点で売上を計上しています。
2. 顧客による検収に至るまでに、日数を要する製品の製造及び販売の場合
当社は、主に・・・に関する製造及び販売を行っており、顧客の検収時点で売上を計上しています。
3. 店舗での小売業の場合
当社は、主に・・・を店舗で販売する事業を営んでおり、レジにて顧客に商品を引き渡した時点で売上を計上しています。
4. インターネットを通じた小売業の場合
当社は、主に・・・についてインターネットを通じて販売する事業を営んでおり、商品の出荷時点で売上を計上しています。
5. 契約期間にわたるサービスの提供の場合(清掃サービス等)
当社は、主に・・・に関する・・・を行っており、期間の経過に応じて売上を計上しています。
6. 建設業の場合
<工事完成基準の場合>
当社は、主に・・・の建設業を営んでおり、対象物の顧客への引渡し時点で売上を計上しています。
<工事進行基準を採用しているものと工事完成基準を採用しているものがある場合>
当社は、主に・・・の建設業を営んでおり、当事業年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については進行基準(進捗率の見積りは原価の発生割合による)により売上を計上しています。その他の工事については完成基準により対象物の顧客への引渡し時点で売上を計上しています。
7. システムの受託開発業の場合
<完成基準の場合>
当社は、主に・・・のシステムの受託開発を行っており、対象物の顧客への引渡し時点で売上を計上しています。
<進行基準を採用しているものと完成基準を採用しているものがある場合>
当社は、主にシステムの受託開発を行っており、当事業年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められるプロジェクトについては進行基準(進捗率の見積りは原価の発生割合による)により売上を計上しています。その他のプロジェクトについては完成基準により対象物の顧客への引渡し時点で売上を計上しています。
8. 不動産の仲介業で、仲介業務の完了日において仲介手数料の売上を計上している場合
当社は、主に不動産の仲介業を行っており、仲介業務に係る取引完了日に仲介手数料を売上に計上しています。
9. 国内運送業の場合
当社は、主に運送業を行っており、運送業務の完了時点で売上を計上しています。